マシロの力により、スミレとマシロが光りに包まれた。
スミレは目をギュウとつむり、離れ離れにならぬよう、シズルとキンカが入ったピカチュウポシェットをギュウと抱く。
いつまでそうしていたのだろうか。
光りが消えた――スミレがそう認識した瞬間、妙な浮遊感がした。
「きゃあ!」
――ドサ
いきなりのことに、混乱するスミレ。下を見ると、高級な机の上である。
しかも、数枚の書類を下敷きにしてしまったようだ。
取り合えず謝ろう――そう思ったスミレに、声が掛けられた。
「・・・お嬢様?」
「ん・・・いたた・・・え?」
「スミレお嬢様・・・ですか?」
書類を片手に、呆然としている青年。スミレは彼を見て、様々な記憶がフラッシュバックのように蘇る。
「あ、ポロさ、ん・・・?」
「は、い・・・」
「ア・・・アポロさんだぁ!!」
「!!!!」
当の昔、スミレの世話係をしていた、水色の青年。
今だ呆然とする彼に、スミレは思い切り抱き着いた。
「アポ・・・会いたかっ・・・」
思わず、涙が零れる落ちる。十年以上会わなかった彼は、そんなに変わっていなかった。
「・・・スミレ?」
そこで、第三者の声が聞こえる。反射的に振り向くと、またしても懐かしい面々。
「ら、ランス兄様・・・!!」
次は、常盤色の髪と瞳を持つ美青年に、スミレが抱き着いた。
「会いたかった・・・会いたかったよぉ・・・」
「あ・・・え?」
照れればいいのか、困ればいいのか、冷静沈着であり"冷酷"の二つ名まで持つランスは、かなり混乱している。
最初に抱き着かれたアポロでさえ、そうなのだ。
――それも、その筈。
現在は、前に解散したロケット団、生き残った幹部での会議中。
ちなみに、スミレが着陸したのは、アポロの机の上だった。
「スミレー。僕のこと無視しないでよー」
そこに現れた、マシロ。条件反射で、(抱き着かれているランス以外)三人は礼をした。
「マシロ様まで・・・!?」
「どどどうなってんだ!?」
「・・・・・・あらぁ」
上から、アポロ、ラムダ、アテナ。それぞれ、元ロケット団の幹部である。
「スミレ・・・取り合えず、離して頂けませんか?」
「やだぁ!!」
「・・・・・・・・・」
今は会議中です――そう続けようとしたランスだったが、ぶんぶんと首を振るスミレの駄々のこねかたがあまりにも可愛らしかった為、言葉が出ない。
その時、スミレのピカチュウポシェットがカタカタと揺れ、シズルが勝手に飛び出してきた。
「スミレ」
――ヒョイ
「ひゃあ!!」
「!」
スミレの両脇を持ち、ランスから引きはがす。
思わぬ人物の登場に、幹部全員の声が揃った。
「「「「シズル様!?」」」」
呆然とする四人。
スミレ達はどう説明しようかと頭を捻らせるものの、スミレは違うことを思い出し、マシロに突っ掛かる。
「マシロ!何で私だけアポロさんの机の上なのよ!?」
「やー・・・ずっと異渡りしてなかったから、照準ずれちゃったみたいなんだよねー。テヘ☆」
「テヘ☆じゃないから!」
未だに現状を理解出来ていない四人にいたたまれなくなり、スミレは力の限り声を上げた。
「ただいま!」
私の愛しい人達
2011.05.13