あわい目のおくそこ(幸村真田)
幸村の病室へ見舞いに行った。
幸村は俺の話を微笑みを浮かべて聞いてくれる。俺も饒舌に部活のことを話した。
いつもより少し寂しそうに微笑むのに気づいたのはすぐだった。空気読めないと称される俺でさえ気づいた。長年の仲間である幸村の微妙な変化なら分かる。そして、俺はその事を放っては置けないのだ。
「幸村」
「なんだい、真田」
「何かあったのか」
「…ん?そんなことはないけど?」
「しらばっくれるなんて柄でもないな、言ってみろ」
驚いた表情を見せる幸村。
「…敵わないなあ、真田には」
「…でも本当に何でもないんだよ」
嘘だ。その空虚な瞳に何が写る?たった今は俺が写っているであろうが、その先を見据える彼の考えは図り知り得なかった。
03.21