別に好きだったとかそういうわけじゃない。遠くから部活に打ち込む先輩の姿を眺めては微かに胸が熱くなる程度の、憧れのようなものだった。
先輩に彼女が出来た。わたしと同じ学年の、調理部の子。遠慮がちな笑顔が可愛らしく、控えめな性格で物静かで料理が得意。何て言う大和撫子。対するわたしは全然可愛くなんかないし大人しくなんかないし、包丁すらまともに使えない。勝ち目なんて欠片もなく、嫉妬すら出来ないほどの完敗だった。
そうして密やかに初恋は終わりを告げる。中学一年生の夏だった。





少しだけ昔話をしようと思う。
当時中学一年生だったわたしは失恋の痛みも覚めやらぬ内に、大海原へと放り出された。興味本位で分厚い料理本を立ち読みしていた時のことだったから非常に驚いたことを覚えている。何せ瞬きをしたそれだけで、本の海から本物の海へと変わったのだから。
あわや溺死と言う九死に一生のわたしを助けてくださったのは、たまたま船で通り掛かった長曾我部元親様だった。混乱のあまり子供のように泣き喚くわたしを、元親様を始めとして長曾我部軍の方々は必死に慰めてくれた。しかし、その時のわたしは状況がわからず混乱していた。船の上から港へ下ろされても、家まで送ってやるからと頭を撫でられても、わたしは全然泣き止まなかった。
恐らく混乱しながらも心のどこかでは理解していたのだろう。ここがわたしの知る場所じゃなくて、きっと家に帰れないと言うことを。そうして益々涙の止まらなくなったわたしに、救いの手が差し出された。

「海に落ちてタ?オーウ、カワイソーに…。行く場所がないなら、ザビーのお城に来ル?」

そう言って、その大きな救いの手はわたしの手を引いてくれた。見上げれば首が痛くなるほど体格のいいその人は優しい微笑みを浮かべ、その時のわたしにはまるで夕日を背負い輝いているように見えた。
今にして思えば頭のてっぺんの剃り上げが夕日に反射していただけで、別に後光でも何でもない。思い出とは美化されるものなのである。

時は戦国、九州の地。
今からちょうど三年前、わたしがザビー様に拾われた時の話である。



タイトル詐欺だと今気付いた。城にトリップしてない
ザビー城でメイドとして働きつつ、瀬戸内や宗麟や立花さんやら島津さんやら官兵衛やらとわちゃわちゃするだけのお話
これ多分誰寄りでも誰落ちでもない。ザビーはまず養父で除外。元親は自分が拾ったから何かと気にかけていてほぼ兄妹状態、元就はザビーが目にかけてるから何かと贔屓にしてやってる内に過保護なお兄様にクラスチェンジ、宗麟の我儘をハイハイと聞き流して面倒見てる内に懐かれて立花さんは宗麟を叱ってくれる夢主にホロリ、島津さんからは娘のように可愛がられて、官兵衛の愚痴を聞いたり慰めたり、みたいな
うん、誰落ちでもない


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