「――それではこれより、特に何の前置きも説明もプロローグも何もなく、ドキドキ☆アドリビトム王様ゲーム大会を開催します!」
「今の時点でまだ前回の会議の方が確実にマシだったような気がしているのは僕だけか?なあ、僕だけなのか?」
「前回の会議に引き続き司会を務めさせていただきますのは、私、ライマ国軍大佐ジェイド・カーティスと――」
「………解説の、キール・ツァイベルだ」
「えー、ちなみに若干名…むしろ一名を除いた皆さんは全力で嫌な予感がしているかもしれませんが、全ての反論や抗議はもれなくリーダー命令と言う言葉の前に丁重に無視させていただきます」
「また職権乱用か…」

「それでは皆さん、心の準備はよろしいですか?ルールは特にありませんが、強いて言うのなら前回のような乱闘騒ぎにはならないようにだけは気を付けてくださいね。と言っても、まあ、今回は回復役が二人もいますので最悪どうとでもなるとは思いますが…」
「おい」
「――改めまして、記念すべき第一回目。王様だーれだ!」

「俺だ!」

「おやおや、一番最初の王様はスパーダでしたか。これは初っ端からとんでもない命令をしそうな気配がしますよ」
「当ったり前だろ?どうせだから何事も楽しまねーとな――つーわけで、二番と五番がハグしろ!ハグだ!もちろん、きっちり一分間な!」
「おーっと!これは定番ながらに中々面白…改め、盛り上がる命令ですよー?さて、二番と五番を引いた方は潔く挙手をお願いします!」

「えーと、二番は俺が引いたんだが…」
「………す、すみません…五番はわたしです…」
「えっ」

「これは考えうる限り一番色々な意味で面白い組み合わせが来ましたね!片や筋金入りの女性恐怖症のガイ・セシル、そしてもう片方は今回の王様ゲーム大会においての恰好の生贄…もとい、紅一点のナマエ・ミョウジ!」
「今生贄って!生贄って言った!この人今わたしのこと生贄って言った!」
「気のせいです」
「諦めろ、ナマエ。こいつ表情すら変えずに言い切ったぞ…」
「おい今すぐ番号変えさせろ!確かにこれはこれで面白い組み合わせではあるけどよ!!」
「一度口にした命令を変えることは出来ません。ほらほらお二人さん、さっさとハグしちゃってください。ああ、ガイ、安心してください。例え恐怖のあまり失神したとしても、ちゃんとナマエが回復してくれますから」

「…あの、ガイさん……」
「いや、ちっ、違うんだ!別にナマエが嫌だとか言うわけじゃなくて――ああ、視線が痛い!殺意の籠った視線が痛い!主にチェスター辺り!」
「あーっと、手が滑ったー」
「――っ!!!」
「いっそ清々しいまでの棒読みだったな…」
「ちょっ、もう、ジェイドさん!ガイさん、すみませんでしたって言うか…あの、大丈夫ですか…?」
「だっ、だ、だ、大丈夫だ…!」
「おやおや、ナマエは意外と恥ずかしがったりしないんですねえ」
「いや、死にそうな顔をした人相手にはさすがに羞恥心とか感じないです…どちらかと言うと同情しか込み上げてこないです……」

「えー、それでは、失神したガイの回復を終えたのでさくさく次に行きましょう。――第二回目、王様だーれだ?」

「お、俺だ!」

「今回はアスベルでしたか。はてさて、どんな命令を?」
「えーと…それじゃあ、そうだな。一番と三番が一つだけ服を交換するとかどうだろう?これなら誰に当たってもそう被害はないんじゃないか?」
「さすがはアスベル、とても理性的な命令だな」
「これはまた実につまらない命令ですね」
「おい」
「ゴホン――えー、それでは一番と三番を引いた方は挙手をお願いします!」

「一番は僕です」
「ま、またわたし…?」
「ナマエさんって本当に運がないんですね」
「そんな笑顔で言わなくたっていいじゃないですかジェイさん…!」

「なるほどなるほど…ジェイとナマエですか。これはまた面白い組み合わせになりましたよ」
「そ、そうか?僕は無難な命令と無難な組み合わせだと思うんだが…」
「キールはわかっていませんねえ」
「そのやれやれって言う顔はやめろ」

「さくっと終わらせてしまいましょう。ナマエさん、何を交換します?」
「そうですね、と言っても今のわたしが貸せるのってこのリボンくらいしかないんですけど……」
「…仕方がありませんね。僕からは髪飾りをお貸しします」
「…可愛い髪飾り……」
「何か言いました?」
「な、何でもないです!えーと、これはどうやってつければいいんですか?」
「普通に髪を結べばいいだけですよ。それからこうして…」
「おおっ」
「……これで完成です」
「おおーっ、ジェイさんみたい…!」
「まあ、髪の色は同じですからね」
「ありがとうございました!それじゃあ、お礼にリボンはわたしがつけてあげますね!」
「え?いや、別にいらな…ちょ、まっ、ち、ちか…っ!」

「いやー、仲睦まじい姉妹のようですね!」
「誰もが思いつつ誰もが言わなかったジェイの地雷を笑顔で踏みに行ったー!!!」

「――そんなわけで、衣装交換も終わりましたのでさくさく次に行きますよー」
「お、おい、苦無が、苦無が向こうから飛んで来てるぞ」
「気のせいです」
「いやいやいや」
「改めまして第三回目――王様だーれだ!」

「俺様だー!」

「おや、今回はゼロスでしたか。これはこれはまた面白そうな命令をしてくれそうですねえ」
「もっちろん!――てなわけでえ、四番が五番をお姫様抱っこ!」
「男女比が圧倒的に男に傾いているこの状況でありながらギリギリの命令を出すその度胸、さすがです!それでは四番と五番を引いた方は挙手をお願いします!」

「やっぱりこれおかしい!わたし四番なんですけど!これ何かおかしいですって!」
「…ご、五番、俺なんだけど……」
「……わたしが、アスベルさんを、お姫様抱っこ…?」
「無理だろ」
「無理です」

「無理だな」
「無理でもやってもらいますよー!王様の命令は絶対です!」
「いやいや、さすがの王様もこれはちょっと命令撤回したいんですけどー…せめて番号を反対にさせてもらうとか……」
「それは出来ません。さあ、お願いしまーす!」

「え、えええ…!?」
「そう言われたってナマエが俺を…お、お姫様抱っこ…とか、出来るはずがないだろ」
「うーん…」
「ナマエ?」
「いや、アスベルさんってすごく細いから、出来なくもなさそうかなって……」
「……これでもちゃんと鍛えてるんだけどなあ…」
「一回!一回だけ試してみてもいいですか?」
「ほ、本当に無理だと思うぞ?」
「どの道やらないと終わりませんし…えーと、失礼します!」
「うわっ、」
「う、うぐぐ……!」
「いや、本当にナマエには無理だって足を持ち上げようとしないでくれ…!っと、と、とにかく離し…!」
「あっ」
「っだ!?」
「うわああアスベルさんすみませんすみませんすみません!!ファーストエイド!ヒール!キュア!レイズデッドー!!!」

「ふーむ、さすがに無理そうですか」
「それくらい試す前にわかるよな?」
「私はナマエの可能性に賭けてみたかったんですよ」
「澄んだ瞳で言うんじゃない」

「はてさて、お姫様抱っこに失敗してアスベルが腰を強打してしまい危うく剣士生命を断たれかけてしまったので、諸事情により次の命令に移らせていただきます。そんなわけで第四回目――王様だーれだ!」

「俺だな」

「おやー、ガイでしたかー」
「目に見えてテンションを下げるのはやめてもらえないかね、旦那」
「いやはや、ガイはアスベルと同じように無難な命令しかしなさそうなのでテンションもだだ下がりですよ」
「それは俺とアスベルに失礼過ぎるだろ…。それに、俺だっていつまでも女性恐怖症をネタにいじられるキャラじゃないぜ?」
「真っ青な顔で言われても迫力も何もないですが…はてさて、どんな命令でしょう」
「命令はずばり――三番が四番に膝枕!」
「ガイ!お前までこの雰囲気に流されてくだらない命令を…!」

「…これ、絶対に何か仕組んでますよね?そうですよね?」
「あっれぇ、ナマエちゃんが四番?俺様は三番なんだけど、これってつまり…」

「ゼロスがナマエに膝枕、と言うことになりますねえ」
「マジで!?おいおい王様、反対にしてくれよ〜」
「却下だ。…と言うか本当なら今すぐ三番が十分間空気椅子って言う命令に変えたくなったんだが」
「そちらも却下します。さあ、後もつかえていますのでさくさく膝枕をお願いします!」

「どうせなら逆の方がよかったけど…まあ、いっか。ほーらナマエちゃん、俺様のお膝にカモーン!」
「う、うわああ…」
「これは…腕を広げたゼロスから圧倒的な犯罪臭が漂っています…!」
「ああ、これは立派なセクハラだ。おいチェスター、お前の出番だぞ」
「ちょっ、おいおい!チェスターをけしかけるのは反則…」
「疾風!!」
「ぎゃあああ!!!」

「…えー、キール先生とチェスターお兄ちゃんによる教育的指導の末にゼロスが重傷を負ったために、今回の命令はこれにて終了。次の命令に移らせていただきます。第五回目――王様だーれだ!」

「俺だ!」

「おや、心なしか非常にすっきりした顔のチェスターが王様ですか。はてさて、どんな命令をするつもりですか?」
「そんなの決まってるだろ。誰もが一度は思い立ちながら、この圧倒的に男女比の傾いている場面で命令を下す勇気がなかったであろうあの命令だ」
「お、おい、チェスター…お前、もしかして……」
「――命令!二番と三番がキスしろ!」
「おおー!やりました、やってしまいました!この一名を除き圧倒的にむさくるしい場面で、チェスターがついに禁断の命令を下してしまいました!果たして今回もまた彼の可愛い妹分、ナマエ・ミョウジは選ばれてしまうのでしょうか?さあ、二番と三番は速やかに挙手をお願いします!」

「………おいおいおい。待て、待てっつーの」
「……ここに来て選ばれんのかよ…」

「こ、これは…!」
「ナマエが晴れやかな顔でガッツポーズをしております!彼女は選ばれませんでした!二番と三番を引いたのは――何と、我らがアドリビトムきっての男前イケメン二人組、スパーダ・ベルフォルマとユーリ・ローウェルです!」
「っしゃあ!見てたかナマエ、やったぞ!!」
「素晴らしい兄妹愛!素晴らしいシスコン力!いやー感動の展開に拍手喝采です!笑い声も多少は混じっておりますが…キール、解説のあなたがそんなに腹を抱えて笑ってはいけませんよ」
「そ、そう言うジェイドだって、笑ってるだろ…!」
「いえいえ。気のせいですよ、気のせい。――さて、幸か不幸か選ばれてしまったお二人はこの世の終わりと言わんばかりのその顔を止めてさくっとキスしちゃってください」
「…ごほん。一応聞いておくが…ジェイド、そのカメラは何だ?」
「需要があるかなーと思いまして」
「何の需要だ、何の」

「ふっざけんな!誰がヤローとキスなんざするか!!」
「俺だってごめんだぜ。誰が好き好んで男とキスなんか…」

「王様の命令は絶対ですよー」
「むしろリーダー命令は絶対だな」
「ええ、当然のことですね」

「くっそ!ジェイドとキールの奴、絶対面白がってるだろ…!」
「――要は、俺とスパーダがキスすりゃいいんだな?」
「はあ?……も、もしかしてユーリお前、やっぱりフレンとデキてたのか…!」
「やっぱりってどう言う意味だそもそもデキてねーよ。…じゃなくて、要は俺とスパーダがキスすりゃいいんだろ。おいチェスター、お前の命令はそれで合ってるな?」

「ああ、もちろんだぜ」
「…ユーリ、お前まさか…!」

「多分、そのまさかだ。――ナマエ!」
「はっ、はい!…って、え?何でわたし?」
「『俺とスパーダ』が『誰に』キスしろとまでは、命令されてないからな」
「ちょっ、待って待ってユーリさん待って!近い!顔が近い!」
「…なーるほど、な。確かにチェスターの命令じゃ、『誰に』キスしろとまでは指定はされてなかったよなァ」
「おおお大人しく二人でキスしてくださいわたしを巻き込まないでスパーダさんも顔がちか…っひゃああ!」

「おおーっと!これは誰もが予想だにしなかった展開です!的確に命令の穴をついてきたユーリとスパーダが、まさかまさかのナマエの両頬にキス!ちなみにバッチリ激写しました!」
「その写真は一体どうするつもりなんだ!?…って、お、おい、チェスター、やめろ、前回と同じ落ちは…!」

「お前らそこに直れええええ!!!」

「――えー、前回と同じく乱闘…と言うよりも、今回は全員がユーリとスパーダを狙っているのでリンチでしょうか?とにもかくにもこのまま王様ゲームを続行するのは不可能と判断しましたので、今回のドキドキ☆アドリビトム王様ゲーム大会はこれにて終了とさせていただきます」
「……ユーリとスパーダを狙って、しかしあいつらが未だ抱えているナマエには当たらないように魔術を使うのは少々難しいな…」
「おやおや、今回はキールまでしれっと参加するようですねえ。ふむ……まあ、今回は私も参加してみましょうか。アンジュへの報告は、この写真だけで十分でしょう」


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