「ナマエ、たまたま廊下を歩いてたら本当に偶然に眼鏡を二つも拾っちゃったんだけど、アンジュさんに届ける前に一度かけてみてほしいな。きっと似合うと思うの!」
「…たまたま偶然に眼鏡を二つも……?」
「……もしかしてナマエ、私が嘘言ってると思ってる…?」
「えっ、や、……そんなことないよ!うん、そうだよね!たまたま偶然に眼鏡が二つ落ちてる日もあるよね!カノンノが嘘なんて言うはずないもんね、うん…うん…!」
「それじゃあ、まずはジェイドさんの…じゃなくて研究室前に落ちてたこのシンプルな眼鏡からね」
「(今、明らかにジェイドさんのって…)」
「はいっ、ナマエ!」
「……………うん……」





「あれっ、ナマエってば眼鏡かけてるー!ほへえ、めっずらしー!何だかすごく賢そうに見えるね」
「眼鏡一つで大袈裟ですねえ、アニス」
「…うん?」
「賢そうに見える、と言うことは普段のわたしは馬鹿のようだと言うことでしょうか。いやはや、傷付きました」
「……あ、あれ?ナマエ?ナマエ…だよね?た、大佐じゃない…よね?」
「わたしのどこかジェイドに見えると言うのでしょうか」
「口調が!その笑い方が!ってか、その眼鏡ジェイド大佐のじゃーん!」
「気のせいですよ。ええ、気のせいです」
「気のせいじゃないよ!あーもう、それ外して!大佐みたいなナマエなんてやだー!」
「おう、ナマエにアニスじゃねえか。何やってんだ?」
「あっ、ルーク様!ナマエの、ナマエの眼鏡外すの手伝ってくださぁい!」
「眼鏡?………ま、まあ、新鮮で悪くないんじゃねえの。似合ってないこともないぜ」
「ルーク様、今それどころじゃないんです!あとで普通に可愛い眼鏡をかけさせますからぁ!」
「似合ってないこともない、とはなかなかに遠回しな褒め言葉ですね」
「……はあ?」
「あなたがツンデレ方面でキャラを立てたいのならお節介でしょうが、普通に似合っていると言ってはいかがでしょう。いえ、もちろん今でさえ微妙にキャラが被っていると言うのにアッシュと同じツンデレキャラになって更なるキャラ被りを起こしたいのであれば話は別ですが」
「…な、何だこりゃ…!ナマエがジェイドみたいになってんぞ…!?」
「そうなんです!その、ナマエのかけてる眼鏡が大佐のものみたいで…」
「ジェイドの眼鏡は呪いの眼鏡か!くそっ、それ外せ!ジェイドみたいで気持ち悪いんだよ!」
「女性に対して気持ち悪いだなんて…。ああ、傷付きました」
「うげえええ気持ちわるっ!外せ!くそっ、ちょこまか逃げんな!」
「ふふっ、捕まえてくださーい」

「うーわー…あの眼鏡さえかけてなけりゃ、ルーク様といい雰囲気だったのに…」
「ええと、ルークとナマエはどうしたんだ?鬼ごっこかい?」
「あ、ガイ。うーん、まあ…そんな感じじゃない?」
「にしては、何だかルークの顔色が悪いような…」
「っガイ!そいつ捕まえろ!」
「え、いや、鬼はルークなんだろ?」
「鬼ごっこじゃねえ!」
「おーにさーんこーちらーっ」
「てめっ、待ちやがれー!!」
「………微笑ましい光景なはずなのに、何だろうな…。今のナマエを見ると、とっ、鳥肌が…」
「人間なんて所詮、心より身体の方が正直なんだよ」
「えっ」





「ジェイドさんの眼鏡はルークさんに取られちゃったし、次はこっちにしようか!」
「ねえ待ってカノンノ何でか知らないけど眼鏡をかけてた間の記憶がないんだけど!ルークさんにお前ビショップの癖に何で無駄に逃げ足だけ早いんだよ馬鹿って涙目で怒鳴られたんだけど!ガイさんには異様に怯えられてるんだけど!アニスさんには無言で肩叩かれて可愛い伊達眼鏡渡されたんだけど!ねえ!」
「うん、そんなことより次はこのリヒターさんの…じゃなくて甲板で拾ったこのお洒落な眼鏡を…」
「(そんなことよりって言った!リヒターさんのって言った!)」
「はいっ、ナマエ」
「……………やだ」
「ナマエ、これで最後にするから。一生のお願いだから、ね…?」
「…………………ち、ちくしょう…」





「あっれ〜、ナマエちゃんじゃねえの!こーんなところで何やってるんだい?…って、眼鏡かけてるなんて珍しいねえ。んー…その眼鏡も似合うけど、ナマエちゃんにはもっとこう、可愛らしいデザインの方が……」
「気安く話しかけないでちょうだい。このナンパ男が」
「…………………ナマエちゃん…?」
「話しかけるなと言ったでしょう。こんな簡単な命令すら聞けないだなんて、家畜にも劣らないほど愚かなのね」
「…っは、ちょ、はああ!?」
「うるさいわね。家畜みたいに所構わず鳴かないでちょうだい、この豚が!」
「豚ー!?」
「ゼロス、そんな大声出してどうしたんだよ。今日の夕飯は豚肉なのか?」
「うっ、うわあああん!ロイドくーん!」
「ぐえっ!ちょ、引っ付くなよ!」
「ナマエちゃんが、俺様の可愛いナマエちゃんが…!」
「誰があなたのものなのよ」
「っあいたー!」
「ナマエ!?っおい、何したらナマエに蹴られるようなことになるんだよ、ゼロス!」
「俺は何もしてねえって!どうしちゃったんだよ今日のナマエちゃんは…ひいっ!?」
「豚如きがわたしを所有物のように言うだなんて、身の程知らずもいいところね。はあ…本当に呆れるわ。世の中、こんなろくでもない男に騙される女もいるんだもの」
「ちょ、まっ、ナマエちゃんその足危ない!どう危ないかは言えないけど!強いて言うなら踏んでる場所が男にとって危ないんだけどー!」
「いい?わたしがあなたのものじゃないの。あなたが、わたしのものなのよ。わかったのなら豚らしく鳴いて返事をしなさい!」
「え…っ」
「何ちょっとときめいてるんだこの馬鹿!!」
「ってえー!っと、…た、助かったよハニー!まだ見ぬ扉を開けちゃうところだった!」
「床に転がってるゼロスのことは無視するとして。…一体どうしたんだよ、ナマエ。何だか今日のナマエは変だぞ」
「…ふん。わたしのことを大して知りもしない癖に、知ったような口を利かないでちょうだい。あんたの知るナマエが、わたしの全てなわけがないでしょう」
「そりゃ、それは…そうかもしれないけどさ。何だかんだナマエとはこのギルドに来てからの付き合いだから、決して長い付き合いとも言えいないし。…でも俺、すっげえ嬉しいよ」
「な、何言って…」
「まあ、確かにちょっと物騒ではあるけど、こうしてナマエとふざけられるなんてさ。それって、今まで隠してたナマエをようやく俺達に見せてもいいって思ってくれたからなんだろ?」
「………」
「だからって理由もなく人を蹴ったり、豚なんて呼ぶのはよくない。…まあ、ゼロスが何かしたって可能性もないわけじゃないから実のところ何とも言えないんだけど」
「ロイドくーん!?」
「……………ふん」
「ナマエ?」
「…ほら。ちょっと、早く立ちなさいよ」
「ナマエちゃん…?」
「いつまでわたしに手を差し延べさせてるの!早くする!」
「おっ、おう」
「ナマエ…」
「べ、別に、あなたの言葉がちょっと嬉しかったとか…そう言うことじゃないんだからね。ただ、その、ちょっとだけやり過ぎたかしらと思い直しただけよ。わたしが、自分でそう思っただけなの!かっ、勘違いしないでよね!」
「ああ、それで十分だよ。ありがとうな!」
「ロイドくんマジ攻略王…!」





「何かもう眼鏡をかけてる時の記憶がない件については突っ込まないけどさ…。ロイドさんから笑顔で今日の夕飯はとんかつだってさよかったな!とか言われるし、ゼロスさんには何だか新しい扉がどうのこうの言われるし、あの、もう勘弁してください…!」
「そんな、せっかくフィリアから借りてきたのに…」
「もうたまたまでも偶然でもなく作為的であることを隠そうともしなくなったんだね、カノンノ」
「って言うのは冗談なんだけど」
「い、今更…」
「えーいっ!」
「きゃー!」





「まあ、ユーリさんにフレンさん。おかえりなさい、お仕事お疲れ様でした」
「ただいま、ナマエ」
「……ナマエ?」
「はい、何でしょう。……ユ、ユーリさん?どうしたんですか、いきなり頭を撫でるだなんて…」
「…お前、本当にナマエか?」
「……ええと、わたしが他の誰かに見えますでしょうか?」
「いや、そう言うわけじゃないが……」
「そんなことよりナマエ、今日は眼鏡をしているんだね。よく似合うよ」
「ふふ。ありがとうございます、フレンさん」
「そうか、眼鏡か!」
「ユーリ?」
「ナマエがかけてる眼鏡だよ。それ、フィリアのやつじゃないか?」
「はい。カノンノさんがお借りして来たそうです。…たぶん」
「たぶん?」
「フレン、実はおっさんとリタがかくかくしかじかで…」
「そこは省略しても大丈夫なんでしょうか」
「…なるほど。眼鏡をかけると、その持ち主のような性格になってしまうのか」
「こ、これが幼なじみパワーと言うものですね…!」
「ジェイドの眼鏡をかけたリタが実際にそうなったらしい。おっさんだけじゃなくエステルもそれを見たらしいから、少なくとも嘘じゃないぜ」
「ユーリ、レイヴンさんに失礼だろう。…しかし、ナマエもフィリアも穏やかな女性だ。本当に性格が変わってるかどうかはわからないな」
「ジェイドかリヒターの眼鏡でも借りて来るか?」
「自分でかけるのなら借りて来るといいよ」
「悪かった。俺もそこまで性格のねじ曲がったナマエは見たくねえ」
「ユーリさん、性格のねじ曲がっただなんてお二人に失礼ですよ。…でも、そうですね。例えもう一度カノンノさんにお願いされたとしても、絶対にかけたくないです」
「…………カノンノ…」
「既に一度かけさせられたのか…」
「大体、カノンノさんはずるいです。あんな風にお願いされてしまえば、わたしが断れるはずもないと知っているはずですのに…」
「ああ、確かによく聞けばフィリアだ。そう言えばカノンノをさん付けだなんて、ナマエらしくないしね。二人共敬語を使うからわかりにくかったけど…」
「むしろ、最初からおかしかったんだよ」
「最初から?」
「…俺を邪険にしないんだ」
「……………は?」
「目が合っただけで頬が引きつるとか、嫌な顔をするとか、ちょっと距離を詰めるとその分離れるとか、手を伸ばしただけでびくつくとか…そういうのがなかったんだ。大人しく俺に頭を撫でられるナマエなんてまず有り得ねえ。断言出来る」
「……………君、少しはナマエへの態度を改めたらどうだい?」
「それが出来たらこんな苦労しねえよ…」





「もう眼鏡なんて見たくない」
「ごめんね、ナマエ。もう満足したから二度としないよ」
「……何だか知らないけどユーリさんにはまーた頬つねられるし、フレンさんにはすごく同情するような目で見られるし…。もう誰の眼鏡もかけないからね!」
「うん。…鬼畜眼鏡なナマエもツンデレ眼鏡なナマエも上品眼鏡なナマエも可愛かったけど、やっぱり私はいつものナマエがいいな!」
「カノンノ…。…………………えっ、き、鬼畜…?ツンデレ…?え、はあ、えっ?」



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