「はい、それでは皆さん静粛に。…これより記念すべき第一回目、アドリビトム男会議を開催いたします。司会は私、ライマ国軍大佐ジェイド・カーティス。そしてこちらは…」
「解説の、キール・ツァイベルだ」
「えー、いきなり召集をかけられて来てみればこんなことになっていて、驚いた方が多いと思われますが…まあ、リーダー命令ですので」
「職権乱用だな」
「職権乱用ですねえ。ちなみに議題はこちら…。ええ、そうですね。我らがディセンダー、ナマエです。彼女について、が議題になっています」
「…ジェイド、ちなみに聞くが。……その明らかに隠し撮りな写真の出所は?」
「おや、それを聞きますか?やはり教え子の身が気になります?」
「ま、まあな!僕はあいつの教師だから、仕方なく…」
「と言うツンデレは置いておいて。どうやら、彼女の保護者代わりをしているリーダーは、最近どうにも彼女の周りの男達が気になるようで。この際だから本音を吐かせてほしいとお願いをされたんですよ。あ、ちなみにこの写真はショップの裏で極秘に取引されていたものなのでご安心を」
「安心出来るか!!!」

「えーそれでは、まずは一番の方から自己紹介をどうぞ」

「一番、チェスター・バークライトだ。ま、ナマエのことなら俺を呼んで当たり前だな」
「二番、ゼロス・ワイルダーね。アンジュちゃんも俺様を選ぶだなんて、いい勘してるぜ」
「…何で僕までこんな馬鹿げた会議に…。三番、ジェイです」
「四番のガイ・セシル、なんだけど…。アンジュもまあ何というか、心配性だな」
「心配性っつーか、ただの過保護だろ。五番、スパーダ・ベルフォルマ」
「こりゃ、答えなきゃ解放してもらえそうにねえな。六番、ユーリ・ローウェル」
「七番、アスベル・ラントだ。…というか、どういう基準で俺達が選ばれたんだ?」

「ああ、それはアンジュの独断で、ここ数日ナマエに下心を持って近付いた来たように見えた方々を特別に選抜したようですよ」
「し、下心…。もしかしてチェスターもか?」
「いいえ、彼はどうやら特別枠のようです」
「何の特別枠なんだ、何の」
「強いて言うなら、お兄ちゃん枠じゃないですかねえ?」

「それでは、何かもう面倒なのですぐにぶっちゃけてほしいんですが。実のところ、ナマエのことが好きでしょう?」
「そう聞かれて誰が馬鹿正直に答えるんだ」
「そうですかねえ、まあ皆さんお年頃ですし」
「…若干名お年頃じゃない奴もいるが」
「いいでしょう。それではまず肩慣らしに、ナマエの容姿について皆さんで話し合ってみてくださいね!」
「一番話し合いにくい議題を真っ先に出した上に丸投げした!!」

「あー…まあ、胸はないわな」
「スパーダ、女性の容姿についてあれこれ言うのは失礼だろ」
「まあまあガイ、どうせ男しかいないんだから、な?」
「ゼロス、お前も…」
「まあナマエちゃんはまだ成長期だし、これからがお楽しみってやつじゃねえの…っとお!?」
「そこのケダモノ三匹!ナマエをいやらしい目で見てんじゃねえぞ!!!大牙ァ!!!」
「何で俺まで!?」

「えー、ちなみに今回の会議はバンエルティア号の一室を使用していますが、この部屋への武器の持ち込みは禁止されています」
「チェスターが思いっきり矢を射っているのはどう説明するんだ」
「彼はほら、シスコンなお兄ちゃん枠ですから」
「何か増えてないか?」
「やれやれ。このままだとスパーダとゼロスと、巻き添えを食らってガイも瀕死になりそうなので一応は止めましょうか」
「むしろもうこの議題ごと終わらせてくれ…!」
「ああ、ちなみにナマエのスリーサイズをご存知である先生としては、スパーダの胸がない発言は如何でしょう?」
「ばっ!あ、あんなの、もう忘れた!!」

「明らかに忘れたって反応じゃねえだろ」
「そ、それより、どうしてキールはその…そんなことを知ってるんだ?」
「キールさんはナマエさんの依頼を受けた際、彼女の健康状態をアニーさんに調べてもらった時に知ったそうです。あと、僕も知ってますよ」
「は?」
「えっ?」
「一応、この船で定期的に行われる健康診断の結果は全員分入手済みですので」
「…ちなみに、情報屋さんよ。そのナマエの情報も、さっきの写真みたいに売り捌いてんのか?」
「あれは僕じゃありませんよ。モフモフ族のみんながお客様である皆さんのニーズに答えようとした結果です。…あと、そういった類の個人情報はトラブルの種にしかならないので売りません」
「そりゃ良かった」
「…つまり、モフモフ族のみんなが盗撮をしてるってこと、なのか…?」

「いやあ、意外な新事実でしたねえ」
「(…ナマエが知ったら泣くだろうな……)」
「それでは、次の議題に行きましょうか。次の議題は、ナマエの好きなところ、についてです」
「も、もうか!?二つ目にして核心なのか!?」
「ええ。何かもう面倒なのでさっさと終わらせ…ではなく、要はアンジュが気にしているのは皆さんが本当にナマエのことを好いているのかどうかですし。この議題についての発言の内、少しでも下心が滲んでいると判断された方は…」
「ど、どうなるんだ?」
「まあ、ご想像にお任せしますということで!」

「…こりゃ、発言には十分気を付けなきゃ終わりだな」
「アンジュちゃんの前にチェスターに殺されそうだぜ…俺様もう瀕死…」
「お前は自業自得だろ、ゼロス」
「ちょっとユーリくん、そーんな言い方はないんじゃねえの?大体、お前が一番ナマエちゃんにベタ惚れだろうが」
「はあ?何言ってんだ。誰があんな…」
「そうやって何かにつけてちょっかいかけるのやめろよ、ガキじゃねえんだから。…ナマエちゃんはお前の捻くれたアプローチに気付けるほど大人じゃねえの、好きならそれなりに分かりやすい態度くらい取れば?」
「…分かりやすい態度を取ってるにも関わらず、普段のへらへらした様子を直さないせいで本気だとも思われてないお前に言われたくないね」

「ガイさん、止めてきてください」
「ま、また俺か…」
「スパーダさんは一緒になって口喧嘩始めそうですし、逆にアスベルさんは言い負かされそうですし、チェスターさんは問題外。ここはガイさんの出番ですよ!」
「自分自身が行くっていう選択肢はないんだな、ジェイ」
「ええ、まあ」
「…はあ…。行って来るよ」
「俺が問題外ってどういう意味だ?」
「まずはその弓をしまってくださいという意味です」

「…にしてもよ。なあ、アスベル」
「何だ?…って、うわ、またガイが吹っ飛ばされてる」
「あれくらい避けろっての。…お前さ、マジでナマエが好きなのかよ」
「なっ、え、い、いきなり何を言うんだ、スパーダ!」
「…その反応で大体のことは分かったけどな」
「えっ」
「あー…結構マジっぽいな、お前」
「お、俺は別に…。ただナマエは、すごく危うい感じがするから…守ってやりたいんだ」
「(…っていうのを素で言う奴だからなあ…。天然って怖ェ…)」

「そう言えばジェイは、ナマエに可愛がられてるよな」
「…いきなり何なんですか?さっき、頭でも打ちました?」
「折角こういう場なんだから、少しくらい本音を言っても構わないんじゃないのか?」
「お断りします。待っているのは、アンジュさんのお説教ですから」
「さすが、賢いな」
「…大体、可愛がられるなんて不愉快ですし」
「はは、ジェイも男の子だな」
「…さっきから何なんです、ガイさん」
「いや、…俺からしてみれば羨ましいよ。あんな風に、頭を撫でてもらえるだけでも」
「…頭を撫でられたって嬉しくありません」
「つまり、男扱いされていないのが不満だと」
「ばっ、ち、違います!そ、そんなんじゃありません!」

「いやはや、ガイもさりげなく良い仕事をしましたねえ」
「…悪魔かお前は…!」
「私はただ、リーダーの期待に応えようとしただけですよ?…それでは、そろそろこの会議を終わらせ……」

「屠龍!!!」

「………おやおや、」
「馬鹿!もう会議は終わりだぞ、チェスター!」

「ああ、もちろん分かってるさ…。要はこいつら全員、ナマエに近付く害虫だってことはな!!」

「病み気味のシスコンが害虫駆除に乗り出しちゃいましたねー」
「何さらりと恐ろしいことを言ってるんだ!あのチェスターが相手じゃ、死人が出るぞ!?」
「まあ…皆さんそれなりに腕に覚えのある方々ですので、きっと大丈夫でしょう。兄の屍を越えてこそ、ナマエを手に入れる権利が…」
「そんなのどうでもいいから止めてやれ!」
「いえいえ、私には今回の会議の結果をアンジュに報告するための報告書を作成するという使命がありまして…」
「後にしろ!!!」

「………何、してるんですか?」

「おや、ナマエ。どうしたんです?」
「いや、さっきから隣の部屋が空室なはずなのにうるさいから、何かと思って見に来たん、です、が……」
「おい、チェスター!ナマエだぞ!……駄目だ、ナマエの姿にも反応しない…!」
「え、あの、これ、どういうことなんですか?」
「まあ、一言で表しますと…青春、ですかね」
「いやいやいや明らかに違うでしょうこんな流血沙汰一歩手前な青春とかわたし認めませんよ!」
「ユーリ、避けろ!」
「いやあああ!ちょっ、チェスターさんやめて!死んじゃう!みんな死んじゃうから!!ガイさんなんてぴくりとも動かないしー!!!」
「尊い犠牲でした…」
「そんなこと言ってないで助けてあげ……って、何書いてるんですか?」
「アンジュへの報告書ですよ」
「…以上の会議の内容から、全員、黒であると断定する。……ええと?」
「ナマエはまだ、知らなくてもいいことですよ」



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