ユーリとエステルとナマエ


「こら」
「ひっ」
「人の顔見るなり逃げた挙げ句に悲鳴上げるたあ大層な歓迎じゃねえか。どういう了見だ?」
「い、いえ、べ、別に、そんな…」
「…ふーん」
「わ、わたしこれからカノンノと街へ遊びに行くので、襟首を掴んでいるこの手を離していただけると…」
「つまり、お前暇なんだな?」
「…は?いや、全然暇なんかじゃありませんよ。カノンノと遊びに…」
「遊びに行くってことは暇なんだろ?俺、今から依頼で魔物を40体も狩りに行かなきゃならねえんだよな」
「…へ、へえ……」
「エステル辺りに同行してもらおうかと思ってたんだが…気が変わった」
「さ、さよなら!」
「逃がさねえよ」
「むぎゃっ」
「ユーリ?そんなところでどうしたんです?」
「おう、エステル。ちょうど良かったぜ。悪いがカノンノに伝えて来てもらえるか。こいつ、俺と依頼しに行くって約束をすっかり忘れてたらしいんだ」
「は、はあ!?ちょ、エステルさ…もがっ!」
「そうなんです?」
「ああ、ほら、ナマエも頷いてるだろ」
「もがー!」
「何でナマエの襟をまるで猫の子のように掴んでいるんです?」
「遊びに行けないことをカノンノに自分で謝りたいそうだ。時間がないからエステル、伝えてくれるか?」
「さすがです、ナマエ!わたしがカノンノに伝えておくので、安心して依頼に行ってください!」
「もががーっ!!」
「…よし、行ったな」
「…ぷあっ、ユ、ユーリさんの馬鹿ー!」
「はいはい。ほら、早く行くぞ」
「あああ、もう!せっかく依頼帰りに見つけたおいしいケーキ屋さんにカノンノを連れて行こうと思ってたのにー!」
「俺と行けばいいだろうが」
「ユ、ユーリさんと?」
「つーか連れてけ。どこだ、そこ」
「えっ、い、依頼は?」
「そんなん後回しだ」
「…もしかしてユーリさん、甘いもの、好きなんですか?」
「…悪いか」
「…い、いや、別に…」





「ん、まあまあだな」
「…ほ、本当に好きなんですね……」
「何だよお前、もう食わないのか?」
「二つで十分ですよ…。ユーリさんみたいに何個も食べられません」
「大丈夫、食えるって。ほら、あーん」
「勘弁してください」
「いいから口開けろよ」
「いやもう本当に勘弁してくださ…むがっ」
「うまいか?」
「……視線が突き刺さるように痛くて、味なんか分かりません…!」


「やっぱりナマエといると楽しくて仕方ねえな」
「そうでしょうね…!」


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