美少女改めグラスバレーさんが所属するギルド、アドリビトムは船を拠点として世界中を行き来しているらしい。
ようやく峠を下り、待ち合わせ場所で一休みしていたわたしの目に飛び込んできたのは、船は船でも空飛ぶ船だった。

「あれがバンエルティア号、私達アドリビトムの拠点だよ」

グラスバレーさんの声を聞きつつ、ゆっくり降下してくる船を見上げた。





「お疲れ様、カノンノ」

すっかり畏縮してしまったわたしの手を取り引いてくれたグラスバレーさんの笑顔に励まされつつ船に乗り込む。
そんなわたし達を迎えてくれたのは、水色の髪をした清楚な白い衣装の、グラスバレーさんとはまた違った感じの美少女だった。
二人が話しているのを、グラスバレーさんと手を繋いだまま眺める。正に目の保養だ。

「ナマエ」
「えっ、はい!」
「アンジュが話を聞かせてほしいって」
「初めまして、リーダーのアンジュ・セレーナです」
「あ、初めまして、ナマエ・ミョウジです」

セレーナさんは信じてくれるだろうか。不安になってグラスバレーさんを窺うように見れば、強く手を握られ、笑ってくれた。何から何まで彼女に頼りっきりの自分が情けないけれど、もう少しだけ彼女に励まされていたかった。





「事情は分かりました。彼女をこのバンエルティア号に置くのは構いません」

セレーナさんへの説明はグラスバレーさんの時よりは簡単だった。あの時はわたしの方が混乱していたので、仕方なかったのかもしれない。論より証拠というわけではないけれど、携帯や音楽プレイヤーを早々に見せてしまえばわたしの荒唐無稽な話も真実味を増すだろう。
グラスバレーさんに助けてもらいながら説明を終えてセレーナさんを窺えば、彼女は優しく微笑んでそう言った。

「あなたの言うことに嘘はなさそうだし、異世界から来たのなら帰る家もないでしょう?どうかしら、依頼という形で帰る方法を探しつつ、この船で暮らすのは」
「…え、で、でも、わたし、この世界のお金とか持ってない、です」

わたしとしてはありがたいことこの上ない提案だけど、さすがにそこまで図々しくはなれない。それに、依頼というにはお金だって必要なはすだ。グラスバレーさんからギルドについて教わった時も、そう言ってたし。
しかし、セレーナさんは可愛らしく小首を傾げ、眩しいばかりの笑顔を見せて言った。

「お金がないなら稼ぐまで。あなたには、このアドリビトムの一員として働いてもらいます!」


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