赤い煙について、もしかしたら精霊は何かを知っているんじゃないか。
恐る恐る足を踏み入れたブラウニー坑道は、ジョアンさんを護衛しに来た時と変わりはない。
赤い煙はないかと緊張しながら見渡していると、そんなわたしに気が付いたのかクラトスさんが声をかける。

「もうブラウニー坑道で赤い煙は観測されていないようだ」
「え、もう消えちゃったんですか?」
「それに関しては分からないけど、とにかくここではもう観測されてないわよ〜」

ハロルドさんが杖を振り回しつつ、つまらなさそうに答えてくれた。
先頭を行くのは唯一ミブナの里の場所を知るクラトスさん、その後ろで杖を振り回すハロルドさんに続き、杖を抱きしめたままわたしも歩く。

「赤い煙、どこに消えたんでしょうね…」
「それを知るためにも、ミブナの里を目指すぞ」
「精霊と交流を持つ忍びの隠れ里!ぐふふ、楽しみ〜!」
「ちょ、危ないですハロルドさん!」

音を立てて激しく振り回されるハロルドさんの杖に慌てて飛びのく。呆れた様子のクラトスさんに咎められても、聞く耳すら持っていない。ハロルドさんの意識は、すでにミブナの里にしか向いていないようだ。

「それにしても、何であんたはミブナの里への道を知ってるの?」
「ミブナの里の近くに、唯一忍びと交流のある村がある。私はそこから来た」
「そうなんですか…」

クラトスさんは寡黙な人だから、故郷の話なんかは聞いたことがない。
珍しく思いながらも、クラトスさんのことを少し知れたみたいで嬉しい。
話は終わりだとばかりに足を早めたクラトスさんに従い、歩き出した。





ミブナの里へと繋がる道には、様々な罠が仕掛けられていた。
忍びの里の上、ウリズン帝国に星晶を狙われているのだから仕方ないだろう。地面から生える棘に開かない扉、ハロルドさんが興味津々に眺める横でクラトスさんが簡単に罠を解いてしまう。わたしは事前にクラトスさんに言い聞かせられていたように、大人しく後ろにいた。

「シ、シーサー?」
「何それ、ナマエのところの動物?」
「え、いや、そういうのじゃないんですけど…」

目の前には、シーサーのような顔をした動く石像が二体。
坑道の奥、ミブナの里へはあと少しといったところで、この二体の石像が道を塞いでいた。

「恐らく、門番のつもりだろう」
「…と、いうことは…」
「こいつを倒さねば、ミブナの里へは行けそうにないな」
「や、やっぱり…!」

クラトスさんが剣を抜いた。それに気付いた石像達が、わたし達を警戒するように跳びはねる。
その度に大きく坑道内の地面が揺れ、思わずふらついたわたしの横にいたハロルドさんが杖を振り回し、石像に向けた。

「面白そうだから、相手しちゃうわよ!」
「おっ、お手柔らかにお願いします…!」
「来るぞ!」

二体の石像が、跳びはねながらわたし達に襲いかかってきた。


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