今回の依頼はモラード村の村長さんからだった。
モラード村といえばジョアンさんが暮らしている村だ。村長さんが言うには、ジョアンさんは病気が治ってすぐに、行商に向かったらしい。あの人も赤い煙に触れていたので心配していたけれど、わたしと同じように何もないならいい。

「それじゃァ頼んだよ。オアシスに着いたら鍵を外してそのまま立ち去ってくれ。そうすれば、後は勝手に出て行くだろうよゥ。くれぐれも、中は見ないようになァ」
「あ、あの、待ってください!」

去って行こうとする村長さんを引き止める。
村長さんはわたしを振り向き、どこか疲れきったような瞳を向けた。

「すみません、ジョアンさんが帰ったら船に来てほしいって伝えてもらえますか?」
「…あ、ああ、構わないがねェ」
「よかった…。ありがとうございます、お願いしますね」

リタさんが言っていたように、これからどうなるか分からない。それならもう一度検査してもらった方がいい。
村長さんは痛ましそうにわたしを見て、無言で背を向け立ち去った。
一抹の不安が、胸を騒がす。





村長さんから引き渡されたケージは、暑さで死にそうなわたしとイリアさんに代わりクレスさんが一人で引いている。非常に申し訳なく思うけど、残念ながら手伝えそうにない。
クレスさんが引くケージの中には、薬で眠らせた魔物がいる。
今回の依頼はこのカダイフ砂漠のオアシスにこの魔物を捨てて来ること。討伐ではなく、搬送だ。

「うっわ、最悪!」

砂漠の途中に陣取っていたのは、巨大な蛇のような魔物だった。
見上げるほど大きな魔物に息を呑んだわたしの前で、露骨に顔をしかめたイリアさんが腰から拳銃を引き抜く。わたしの背後にケージを置いたクレスさんも、剣を構える。

「ケージを守るためにも倒しておいた方が良さそうだ」
「そのケージをあいつに放り投げて、それで仕事も終わりでいいじゃん、もう!」
「行くぞ、イリア、ナマエ!」
「聞いとんのかい!」
「や、やっぱり戦うんですかー!?」

後ろで喚くイリアさんとわたしをスルーして、クレスさんは魔物に向かって行った。さすが天然、さすがクレスさん。
イリアさんは頭を抱え、仕方ないといったようにため息を吐くと、魔物に拳銃を向けた。わたしも釣られてため息を吐き、抱きしめていた杖を構え直す。

魔物の咆哮が、渇いた砂漠に響き渡った。


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