同じ夢を、繰り返し見るようになった。
ルミナシアに来る直前、わたしの記憶が途切れる寸前までの夢。暗い夜道を歩いて、歩いて、それ以上先には進めない。
別にいやな夢でも怖い夢でもないけれど、永遠と歩き続ける夢を毎晩のように見ているとさすがに気が滅入る。というよりも、精神的に疲れる。
ジョアンさんからの依頼を受けると言ったあの日から、ずっとこの調子。あの時感じた胸騒ぎも、絶えることはない。

「ナマエ、どうかした?気分でも悪いの?」
「えっ、嘘!大丈夫?」
「す、すみません、全然大丈夫です」

俯いて息を吐いただけなのに、ファラさんとマルタさんは心配そうな顔をしてわたしの顔を覗き込んできた。慌てて笑顔を取り繕えば、二人してどこか不満そうな顔をしながらも納得してくれる。
その時、少し前を歩いていたジョアンさんが膝を崩し、うずくまった。

「ジョアンさん!」
「だ、大丈夫ですか?」
「…う、ぐ…っ、…だ、大丈夫です、いつもの、発作、なので…っ」

息も絶え絶えにそう告げるジョアンさんの顔は、まるで死人のようだ。
震える手で取り出した薬を飲もうとするジョアンさんを支え、薬が効くまでの間、ファラさんとわたしは周りの警戒に当たる。

「ナマエ、そっちは?」
「大丈夫です」
「うん。でも、気を抜いちゃ駄目だね」
「…あの、ファラさん」

ジョアンさんと彼の側にいるマルタさんに聞こえないように、声を潜めて囁き呼ぶ。首を傾げ続きを促すファラさんに少し躊躇いながら、聞いた。

「…病を治す存在、本当にいると思いますか?」
「…うーん…でも、現に体験した人がいるし…」
「そう、ですけど」

ジョアンさんは、医者も匙を投げるほどの難病に侵されている。そんな彼が最後の希望とわたし達を雇い、藁をも掴むような思いで縋り付いているものが、このブラウニー坑道の奥にいるのだ。
事実、彼と同じ村にいるミゲルさんという人は、同じ病気を患いこの坑道の奥で命尽きかけたその時、その存在に助けられたらしい。

「…す、すみません…。もう、大丈夫です」
「無理をしちゃ駄目ですからね」
「そうですよ。無理はしないでくださいね、ジョアンさん」
「ゲホッ…は、はい…。あ、ありがとう、ございます……」

まるで警報を鳴らすように頭を貫く鋭い痛み。
足を進めれば進めるほどわたしを掻き乱す胸騒ぎが、不安と焦燥感、そして恐怖を煽る。
揺れる蝋燭の明かりの下に、鉄格子の扉が見えてきた。
頑丈に施錠された扉は、ジョアンさんが持っていた鍵で開いた。
長年忘れ去られていたかのように錆びた音を立てて、ゆっくりと。


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