「ナマエ、あなたに受けてもらいたい依頼があるの」

赤い煙についての情報は集まらず、アンジュさんもわたしも頭を悩ませていた。いくつかの採掘跡地にも行ってみたけど、それらしきものは見れない。仕方なく今まで通りの日々を送っていた。
そんな、ある日。

「わたしに?」
「ええ、不思議な依頼なの。他の同行者はファラとマルタ、目的地はブラウニー坑道」

渡された紙は相変わらず読めないけれど、所々、文字だと認識出来るようになった。これも熱心にわたしに文字を教えてくれている、キールさんのおかげだ。
アンジュさんは首を傾げるわたしに、少し躊躇いつつ、説明を始めた。

「モラード村のジョアンさんっていう人が、今回の依頼人なんだけど…。ジョアンさんは不治の病を患っていて、医者すら匙を投げたらしいの。けれど、ブラウニー坑道の奥に病気を治してくれる存在がいるから、護衛をしてくれって」
「…え、ええと…ルミナシアには、そういうものが存在するんですか?」
「少なくとも、私は知らないわ」

アンジュさんは眉を寄せたまま、首を横に振る。
不思議と、何といえばいいのだろうか。心臓がうるさい。胸騒ぎがする、というのか。早鐘のように鳴り響く鼓動に戸惑いながら、頷いた。

「…わかりました。この依頼、受けます」


それは、世界の終わりが始まる音。


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