今日はカノンノに依頼が入っていたので、リッドさんが訓練に付き合ってくれた。リッドさんは村では猟師をしていたそうで、たまに依頼に関係なく狩りをするのだとか。

「ナマエもそろそろ試験か」
「そうですね、アンジュさんの準備が終わり次第だと思います」
「この分なら大丈夫だと思うぜ」

そう言って笑ったリッドさんに、わたしは苦笑を返した。
リッドさんの肩には彼とわたしで狩った動物達が吊されている。ロックスさんから夕飯の調達を任されているので、恐らくまだ狩らなければならないだろう。
抵抗がないわけがない。地球にいれば、気付かなくてもよかったことだ。けれどこうして気付いてしまったからには、見なかったふりは出来ない。

「どうだ、ここでの暮らしはもう慣れたか?」
「はい、みんな良くしてくれますから」
「ったく、いつまでも他人行儀な奴だな」

リッドさんは拗ねたように言って、軽くわたしの頭を小突いた。
そうだろうかと首を傾げる。これでも最初に比べれば大分緊張しなくなったと思うし、リッドさんと二人だけで出かけられるくらいには、打ち解けているつもりなのに。
というより、この世界の人達がフレンドリーなだけだと思う。会ってすぐに名前呼び、例え年上でも先輩でも敬語はなし。そうされる分にはいいけれど、わたしがそうするのはまだ無理そうだ。

「よし、一羽くらい焼いて食っちまうか」
「え、そんなことしていいんですか?」
「構わないだろ、こうして外で食うのも旨いもんなんだぜ?」

お前、そうやって食ったことないだろ。
リッドさんがしたり顔で言う。結局その誘惑には抗えず、心の中でロックスさんに謝った。





「おかえりなさいませ、リッド様、ナマエ様」
「ただいま。ほら、夕飯の材料、狩って来たぜ」
「はい、ありがとうございました。…ナマエ様?どうかしましたか?」
「な、何でもないです」

薪で焼いて、塩と胡椒をかけただけなのに。本当に今まで知らなかったのを後悔するくらいのおいしさだった。一人で感動に震えていたわたしに気を良くしたらしいリッドさんに勧められるまま、何だかんだとかなり食べてしまった。確実に夕飯が入りそうにない。
不思議そうな顔のロックスさんに隠れ、リッドさんと内緒だと苦笑し合い別れた。

「すみませんナマエ様、少しよろしいですか?」
「あ、はい」

ロックスさんから紙袋を手渡される。首を傾げるわたしに、ロックスさんは申し訳なさそうに頭を下げた。

「僕としたことがこれから夕食の準備をしなければならないのに、お嬢様にお渡しするのをすっかり忘れていて…」
「カノンノに渡しておけばいいんですか?」
「はい、お願い出来ますか?」
「わかりました。カノンノは操舵室ですよね」

バンエルティア号を案内してくれた時、カノンノは操舵室が一番のお気に入りだと言っていた。
ロックスさんに確認すれば、嬉しげに頷かれた。

「ありがとうございますナマエ様。お礼に、今日の夕食は期待していてください」
「…あ、ありがとう、ございます……」

夕飯食べれません、とは言えず、ただ引き攣った笑いを返した。


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