小ネタ&妄想倉庫
夢主の名前はナマエ固定

2013/11/18

「ナマエ、何か変わったよな」

好きだよと告げられる前の何気ない言葉が、わたしの胸にぽっかり空いた穴に落ちていった。

交通事故で死にかけたと思ったらラザリスとルミナシアの世界樹に救われてそのままルミナシアでディセンダーって言う救世主様してました。
なんて、誰が信じてくれるだろうか。両親なら、わたしのことが好きだと言ってくれた彼なら、果たして信じてくれるのだろうか。
そんな自問自答をしながら傷ひとつない真新しい携帯をいじる。日直でもないのに帰りが遅いからか、お母さんからメールが入っていた。早く帰っておいで。たった一言、たった一言わかったと返信すればいいだけなのに、何故わたしの指は躊躇うのだろう。この胸に渦巻く郷愁が、刔られたこの胸の穴が、どこまでもわたしを苛むのだ。

吐き出したため息は白く染まる。携帯をダッフルコートのポケットにしまい、ガードレールに腰掛けて夜空を見上げた。星はひとつも見えない。この世界はこんなにも色のないものだっただろうか。あの世界はあんなにも、あんなにもあんなにも美しく輝いていたのに。
思い出すのは見上げた空の美しさ。掛け替えのない仲間がいた。愛する親友がいた。生まれた世界も、両親も、これまで築いてきた全て何もかもを捨ててまで側にいたい人がいた。
好きなひとがいた、あの美しい世界。

ガードレールを握る手の隙間から淡く光が漏れて溶ける。これだけが、わたしに残されたたったひとつの奇跡。ルミナシアとの繋がりだった。
開いた目に飛び込んできた白い天井。規則的に鳴る機械音と点滴、嗄れた喉と消毒液の匂い。始まりも終わりは唐突だった。少なくとも、わたしの意志とは関係なかった。
あの日、あの世界に行くきっかけとなった交通事故から一命を取り留めたわたしは思いの外早くふつうの日常に戻れていた。あちこち傷は残ったりもしたが目立ちはしないし、こんなわたしのことを好きだと言ってくれる人もいる。


//ここまで

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