小ネタ&妄想倉庫
夢主の名前はナマエ固定

2011/10/02

ラザリスは、冷たい匂いがする。ひんやりとした甘く冷たい匂いのする体は、女の子らしい柔らかさがある。あの子はとても可愛い、女の子。
回想を遮るように、ぎしり、とベッドが軋んで悲鳴を上げた。

「あの、…ラザリス、だよ、ね?」
「うん、そうだよ」

そう答えたラザリスの声は、いつもより明らかに低く聞こえる。
薄暗い室内にも白く映える肌も、わたしを見下ろす赤い瞳も、ラザリスのままなのに。
わたしを押し倒したその腕も、唇を這う親指も、頬を撫でるてのひらも、何というか、その。

「…わたしの知ってるラザリスは、女の子、なんです、けど……」
「僕に性別はないよ」
「…え?」
「だって僕は、世界だからね」

今までの姿は、ナマエに合わせて作ったから女の子だっただけ。さらりとそう言ったラザリスに、わたしの頭はぴたりと思考をやめた。
それは、つまり、ええ、と?
わたしの体を這っていた腕を取る。いつもの通り病的な白さの肌は変わりない。でも何だか根本的に、その腕はいつもよりたくましいような。
恐る恐る見上げたその顔は、あどけない可愛らしさは残しつつも、端正になっている、ような。
これは、つまり、その。

「………男の子に、なってる?」
「さっきからそう言ってるじゃないか。ナマエは可愛いね」
「かわ…っ」

思いがけない言葉にぴしりと固まったわたしを見下ろしたまま、ラザリスは楽しげに微笑んで額に口付ける。ご丁寧にちゅう、と可愛らしいリップ音を立てて。
慌ててそんなラザリスを振り払うように、強引に肩を押して起き上がる。わたしを押し倒していた状況が楽しかったのか、ラザリスは不服そうな顔になった。
こうして向かい合うように座ってみると、いつもはわたしより低い位置にある頭がわたしと同じくらい、もしかしたら少し上くらいになっているのに気付く。手を置いたままの肩も、確かに広い。
可愛い。いつも通りに、可愛い、けれど。それは少女の可愛さではなく、そう、少年の可愛さだ。

「なっ、何で?どうしていきなり男の子に!?」
「僕としては、ナマエに可愛がってもらえる女の子のままでも良かったんだけどね」

ラザリスはそう言って、拗ねたような表情を浮かべた。
不機嫌そうな声はさっきよりも低い。肩に置いていたわたしの手を取った大きな手を呆然と眺めていると、そのまま再び、強引に押し倒された。
あまりの展開に目を白黒させるしかないわたしに構わず、ラザリスは満足そうにわたし見下ろす。

「こうして異性になってみると、ナマエがこんなに小さくて可愛い女の子だってことがよくわかるよ。性別を変えただけなのに、不思議だね」
「は、はあ…」
「皮肉だけど、…悔しいけど、彼らの気持ちも、分かるかな」
「そ、そうですか…」

これは何だろう、一体、どうしたのだろう。
夢か現かそれとも幻か、わたしが現実逃避気味にそんなことを考えていると、ラザリスがそれに気付いたらしい。すう、と赤い瞳が細められる。

「何を考えているの?」
「いや、…ええと、ラザリス、の、ことを…」
「僕のこと?本当に?」
「う、うん…。な、何かびっくりだよ。ラザリスが男の子に、と、か…」

そこで、ふと気付く。
今のラザリスは、男の子だ。わたしを檻のように囲む腕も、服の隙間から除く喉仏も鎖骨も、まるで花が綻ぶような可愛らしい笑顔さえも、少年のそれだ。
嬉しそうに頬を染めた彼の赤い瞳に、得体の知れない熱のようなものを見つけた気がして、唐突に恥ずかしくなった。
そうだ、そうだよ。いくらラザリスだからって、いくら今まで一緒に寝たり一緒にお風呂に入っていたりしていた相手とはいえ、今は男の子。
男の子と、ベッドの上。これって十分、危ない、よね。

「彼らも、こんな気持ちなんだろうな…」

ラザリスが呟く。
どこかうっとりとした声で、じりじりと燻る熱を内包した、瞳で。
白くて冷たい指がわたしの頬に触れ、そのまま首筋を辿る。ぷちり、という音がして、制服のリボンが外された。

「やっぱり僕は、可愛がられるより可愛がりたいな。…だから、ナマエ」

ぎしり、ベッドが再び悲鳴を上げる。

「ぐちゃぐちゃのどろどろになっちゃうくらい、可愛がってあげる」

愛おしいものを見るような、壮絶なまでに艶やかに微笑み。
まるでその微笑みに麻痺したかのように震える体を、明確な意思を持ったラザリスの手が、煽るように撫で上げた。

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -