小ネタ&妄想倉庫
夢主の名前はナマエ固定

2011/08/14

ソフィの手の中で、小さな白い花が一輪、寂しく風に揺られていた。

「ソフィ、その花はどうしたんだ?」
「ナマエのお見舞い。この依頼が終わったら届けに行くの」

納得して頷きつつ、白い花を眺める。
きっとナマエも喜んでくれるだろうが、花一輪では寂しくないだろうか。周りにこの花は見えないが、船に帰る途中で花屋に寄ってみようか。ナマエは、どんな花なら喜んでくれるだろうか。

「ナマエ、大丈夫かな」

どこかに思考を飛ばしていた俺を現実に引き戻したのは、ソフィの心配そうな声だった。
ジェイドに背負われ、船に戻って来たナマエの、この花のように真白い顔を思い出す。
握りしめた拳を隠しながら、微笑んでソフィの頭を撫でた。

「きっと大丈夫だ。リタもハロルドも、アニーも付いているんだから」
「…うん、そうだね」

ソフィが視線を落とした先の、頼りなさげに揺れるその花。
ただその姿を眺めていると、ソフィが笑う。

「ナマエみたいでしょ」
「え?」
「この花、ナマエみたいだなって」
「…ああ、」

白くて、小さくて、頼りなさげなその姿。
そうだ、ナマエに似ているのだ。彼女が倒れる前の、背丈程ある杖を抱えて笑う姿に。
確かにナマエみたいだと笑えば、ソフィが満足そうに頷いた。ソフィの方も一輪だけだと寂しいと感じたのか、花畑に足を踏み入れ一輪ずつ丁寧に摘んでいった。
楽しそうに花束を作るソフィを眺めながら、ふと足元に咲くその白い花を見る。徐に手を伸ばし、小さな花を一輪摘んだ。
呆気なく手折られた花が手の中で寂しげに揺れている。日の光に透けるように白い花弁に触れてみれば、まるで涙のように零れ落ちた。
思わず、気まぐれにその白い花に口付ける。

(どうか、この花のように誰かに酷く、手折られませんように、)

閉じた瞼の裏には、依頼に出る前に見た安らかなその寝顔。
いきなりの突風が俺の手から、ソフィの手から、花を攫う。
空に散らばった花達の中に、花弁が一枚欠けた花を見つけ、どこか昏暗い想いを自覚しながら、微笑んだ。

(俺にだったら、もちろん大歓迎なんだけど)

白い花を手折りたくなるのは、その無垢さが愛おしくて、憎らしいせい。
守らせてくれないなら、誰かに手折られるくらいなら、いっそ手折ってしまおうか。

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