烈火のおかげでそれほど時間が掛かることなくタマムシに着いた。迷わずにも済むし、烈火様様だ。
そんな烈火は目をキラキラさせて周りを見ている。

『すっげー!!!華音のいってた通り人いっぱい!!!』

ぐるぐるまわりを見回して尻尾がバタバタと止まらない。

『黙れ馬』
『何だと!!』
『二人とも煩い。特に馬』
『すんません…』

最近は夜と烈火が喧嘩すると霙が煩いのが嫌で怒ると烈火がしゅんとするというサイクルが出来ている。微笑ましい。挑発するのは夜だけど、烈火が乗ってこないと夜から喧嘩をする事はないので悪化しない。世の中は上手く出来ている。

『どこ行くの?』
「取り敢えず街を回って…」
『なあアレ何!?キラキラしてる!』

烈火が見ているのはゲームセンターだ。
昼間にも関わらず電飾がキラキラと輝いている。

「お金がかかるからあんまり遊べないけど寄ってみようか」
『さんせー!!』


中に入ると、擬人化してボールから出てきた烈火がぐるぐると回るスロットを目で追いかけている。

「見るのは良いけど迷惑かけないようにねー」
「はーい!」

「…ここ、煩いわね」
「こういうところだからしょうがないね…ボール戻る?」
「入っててもあまり変わらないから華音の傍に居るわ」
「可愛いやつめ…」

ぎゅうっと抱き締める。同性だから蘭は嫌がらないし抱き返してくれるから幸せだ。偶にはこういうのもなければやってられない。

「なあ、華音」

蘭を堪能していた私の肩を誰かが叩いた。覇剛だ。
何処かをまっすぐ見ていた。空気もピリピリしている。

「何でここにあれがいるんだ」

視線の先には黒い服にお馴染みのマーク。部屋の隅でこそこそしている。
もしかして居ないかも、と期待したけどそんなことは無かった。まだ、ここの問題は解決していない。

「手は出しちゃダメだよ」
「でも、」
「メインディッシュは後で、ね?」


烈火が満足するまでゲームセンターで遊んだあと、次はデパートに行くことにした。
この世界に来てから初めての大きな建物だ。楽しみに決まっている。

「それにしても…」
「すごい視線だね」

霙を除く全員が外に、擬人化で出ている。
こんな美男美女集団…ほっておく訳ないですよね…

「なにあのイケメン集団!!」
「私のあの黒髪の人好き!クールでかっこいい!写真撮ってもいいかな!!」

携帯を構えると夜が睨んだ事で固まったが、逆にキャー!!!こっち見た!、違う私を見たのよ!というテンションを上げる結果になってしまった。写真を取られなかっただけ良しとしよう。

「…煩い」
「落ち着いて落ち着いて!」
「そんな華音も落ち着いたら?」

爽がぽんぽんと頭を撫でる。

「やーん、あの人もいい…」
「あんなお兄さん私もほしー!」

ひらひらと声の方へ手を降ると、ぼっと顔が赤くなって倒れてしまった。漫画か。

「こんなので倒れるなんて単純だね」
「……」

気づいて下さい先程の女性方。この人黒属性です。

「あの彼女…美人過ぎないか!?」
「スタイル良すぎだろ」
「踏まれたい」

蘭は確かに美人だ。性格にもそれ程問題はないし…て、おい誰だ欲望言った奴。

「汚いものをわざわざ踏みたくないわ」
「…そうですね」

忘れていた、この人も黒属性だった。

だめだ…ここの人達性格難多すぎる…

「あの人背が高くてかっこいい!」
「背が高いだけでポイント高いよねー」
「あの、周りを警戒してるのもいい!私がその警戒溶かしてあげたいー」

今度は覇剛か。確かに背が高いのは女性にとってポイント高い。だが、筋金入りの人間嫌い。
ダメだこりゃ。

「…華音も背が高い方がいいか?」
「特に気にしたことはないけど…あって損はしないんじゃない?」
「そ、そっか」

顔がどんどん赤くなる。さっきの会話のどこに赤くなる要素が…

「その上照れ屋なんて…ギャップ最高!」

イケメンはどんなことしても好感度上がるんですね…

「あの子も可愛い!周り見てきょろきょろしてる!」
「いいなーあんな弟ほしー」

烈火は確かに弟ぴったりだ。好奇心旺盛だし人なっこい。

「なーなー、あれ何?水がぶーって出てる!」
「噴水だよ」

但し手の付けられない天然馬鹿だ。森で暮らしてたからしょうがない。

「あの子は男の子女の子どっちだろう?」
「どっちでもかわいいー!」

…私の仲間にそんな子いたっけ。私なわけないし、他の人かな。そんな可愛い子なら見てみたい。

「僕のこと」

袖を引っ張られた。同時に外野からのキャーと言う悲鳴が大きくなる。
見るとそこには透き通った水色の髪の子供がいた。私よりもずっとちっちゃくて、髪も長いし顔も中性的だから本当性別がどちらかなんてわからない。
その前に服引っ張れたということは知り合いなんだろうけど私にこんな知り合いは…

「わかんないの?馬鹿じゃない?」
「…もしかして霙?」
「それ以外に誰がいるの」

この誰に対しても上目線。間違いなく霙だ。

「霙って擬人化できたの!?」
「馬鹿に出来て出来ないわけないでしょ」
「霙ってオレに対して当たり強くね?」
「煩い馬鹿」
「…黙ります」

それにしても可愛い…いいよねショタ。こんなに可愛かったらどんな服着せても似合うんじゃ…女の子の服だって…

「着ないからね」
「…口に出てた?」
「顔でわかる」

…よく言われます。


「本当美男美女集団だな…」
「実は俺、本命真ん中の子!女神だ…」
「わかる!あの子女から見ても可愛い!品があるよねー」
「あんなに可愛いと鑑賞向きって感じだけどつい愛でたくなる!」
「外国人かなー顔も整ってるし髪も青くて綺麗!あれ藍色っていうんだっけ」
「目も透き通ってるし…俺にもあんな彼女が…」

「…え、私のこと」
「今更気付いたの、鈍感」
「う゛」
「結構前から言われてたのにね」
「…見た目には自覚はあるんだけどそこまででは…」

(そこまでいってるんだよ!)
この仲間になって初めて心が通じた瞬間だった。

「霙も私可愛いとか思ってくれてるの?」
「見た目は認めてる。中身は残念」
「今グサッて刺さった…」

あと、誰か違うって言い返してよ…


そんなこんなでデパートにたどり着いた。
ここから階ごとに自由行動にしたけど、問題を起こさないといいな…特に烈火…誰かをセットでつけよう。

初めは道具の補給と食材を買い集めて…
ポイポイと道具をカゴに入れていると、服を引っ張られた。
その方を向くとまた霙だ。

…服を引っ張る仕草とか、この上目使いとかわざとなんだろうか…見た目を有効活用しすぎ。

「どうしたの霙」
「あれ何」

指した方向にあるのはお菓子コーナー。その中の飴を指していた。

「あの、棒が付いたやつ」
「あー、ペロペロキャンディーだよ。ロリポップとも言うけど」
「ふーん。あれ買って」
「はーい」

自分用と甘党な仲間用にも多めに取った。後で皆で食べよう。

「これぐらいでいいかな。皆呼んできてくれる?」
「面倒だから初めに会った奴に頼んでくる」

…それでも行ってくれるから少しは懐いてくれたかな?


「じゃあ次は服!」
「なんでいきなり服を…」
「…ヒミツ!」

黒いパーカーと短パンを購入。
後は髪だな。私のは目立つし、知ってる人もいるかもしれないからヴィッグの方がいいかな。
もしかしての為に帽子も…

「…潜入する気か」
「いたんだね、夜」
「服には興味無いからな」

必要な物は揃った。レジに向かう。

「止めたら、聞くか」
「今回は…無理かな」

誰かが助けを待っているかもしれないと思ったら、行かないわけにはいかないのだ。

「なら、止めない。だが、頼れ」
「分かってる。私一人じゃ何もできないから」
「…忘れるなよ」
「…うん」


いざとなったら…止めてね夜。

「華音ー!烈火が知らない奴に着いてった!!」
「あー!!!待って会計終わったら探すから覇剛追い掛けて!」

私は皆の様な人を生み出さないため、悲しませないためなら、頑張るよ。


うちに秘めた決意
(プロジェクト、始動)
140513


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