早く行動したおかげか、日が暮れる前にハナダジムに着くことが出来た。
もう、グリーンはジムを終えて次の町に向かったんだろう。早く追いかけないと。

「失礼します…」
「あれ、挑戦者ですか?」
「はい」
「すみません、今カスミ…ジムリーダーは出てて…奥を好きなように見ていてくださいね」

ジムトレーナーであろう美人なお姉さんに言われた通り奥に向かうとそこは水族館になっていた。水槽にはカントーのポケモンをメインとした色々なポケモンが泳いでいる。

「お、トサキント。クラブもいる。うわ、パウワウにタッツーも!」
『うるさい』
「だって見たことないポケモンばっかりだし!」
『ねえ華音、あれは?』
「ん?あ、サニーゴまで!?立派な水族館だなあ」
『水面もキラキラしていて綺麗ね』
「確か上はプールになってるはず」

近づいてきたタッツーに手を振ると、嬉しそうに水中でくるくる回った。

「…神秘的だな」
「そう言ってもらえてうれしいわ」

声の方に振り向くと、アニメでよく見た姿その通りのカスミがいた。

「初めまして、ここのジムリーダーのカスミよ」
「初めまして、華音です」
「うちのジムに挑戦でいいのよね?着いてきて」

階段を上るとそこはアニメの通り観客席のついているプールだった。水ポケモン以外も戦えるように水上に板も浮いている。

「そっちのポケモンは何体?」
「3です」
「じゃあ、3対3でいいわね。早速始めましょう。行けっ、マーイステディ!」

出てきたのはトサキント。カスミアニメ定番のポケモンだ。

「…初めは手堅く夜に任せようかな」
『はいはい』

適当な返事と共にボールから勝手に夜が出てきた。…本当に勝手だ。でも支障はないからそこも夜らしいな。

「ブラッキーでいいの?」
「はい」
「ルール説明はいらないよね。じゃあ、審判よろしく」

はい!、とプール際にいた男性が声を上げた。

「では、3対3。バトル…始め!」

マイク越しのその声でバトルは始まった。

「水の波動よ!」
「避けてシャドーボール!」

どこから来るか分からない水中からの攻撃を避けることが出来たが、水中が得意分野のトサキントに簡単に攻撃を当てることはできない。さて、どうするべきか。

「水の中では負けないわ!つのでつくよ」
『とっととどうにかしろ馬鹿トレーナー』

いつもの毒舌を喰らい、へこむがひょいひょい避ける夜を見て私の必要があるのかと一瞬悩んでしまった。…本当出来る子です…

「プールサイドに行って!」
「逃げたって無駄よ!もう一度水の波動よ!」
「怪しい光!」

プールから飛び出した所に怪しい光が当たり、混乱したトサキントは攻撃を止めプールサイドに落ちた。よし、上手くいった!

「だましうち!」

避けることも出来ず、攻撃は直撃。水の中に叩き返された。皆が息をのんで見守る中、水面に目を回したトサキントが浮かんだ。いつもながら惚れ惚れするぐらい強い。

「そんな…一撃で」

カスミは驚いて夜を見る。何回この反応を受けたことか…

「ありがと、夜」
『運動にもならない』
「それは言い過ぎ…」

「あなたって見た目によらず強いのね!」
「褒め言葉として受け取っておきます」


続いてカスミが出したのはヒトデマン。こちらも爽で応戦した。相性の問題もあり、早々に決着がついたので話は割愛。そして次のポケモンは進化形のスターミー。相性では有利だからそのまま爽でもいいけど…

「蘭、やってみる?」
『まかせて』
「じゃあ、お願い蘭!」

ボールから蘭を出した。変えてきたことにカスミは驚いたようだったが、言葉は発さず、バトルは始まった。

「バブル光線!」
「水中に十万ボルト!」

逃げ道のない水中での十万ボルトは効果抜群だ。だが、スターミーは変わらずぴんぴんとしている。

「どうやら電気タイプでは無いみたいね。そんな攻撃じゃ倒せないわ!高速スピン!」
『ひゃ……!!』
「蘭!!」

スピードに追い付けず、水面からいきなり現れたスターミーの攻撃を直に喰らい、水の中に落とされた。

「水の中ならこっちのものよ!うずしおに閉じ込めるのよ!」

うずしおで完全に水の中に閉じ込められてしまった。これじゃあ水ポケモンではない蘭には不利すぎる。
どうにかして抜け出さないと…

「蘭、大丈夫!?」


遠くで彼女の声が聞こえた。水の中でも声は聞こえるんだなと、変なところに考えがいった。
きっとアタシを心配してくれているのだろう。そんな不安そうな声を出さないで。
貴方に貰った物はほんと大きくて、アタシの手には余る程の物で。
恩返しくらいさせて?貴方の悲しむ顔はみたくないの。

だから、

『この勝負、負けられない』


蘭の体が光出した。体は形を変え、ミミロップへと進化した。
進化の衝撃でうずしおが壊れた。その隙を突き、蘭はスターミーに体当たり―ではなく恩返しをぶつけた。直撃したスターミーは壁に叩きつけられた。

「蘭、まだ行ける?」
『余裕よ。任せて』
「じゃ、最後はソーラービーム!」
「嘘っ、逃げてスターミー!」

壁にはまってしまったスターミーは身動きすることできず、蘭のソーラービームがスターミーに当たった。効果は抜群だ。タイプ一致でなくても流石に効果抜群の技を二回食らったスターミーは戦闘不能だ。

『…ふう』
「蘭お疲れ様」

水から上がってきた蘭に手を差し出す。笑ってこの手を取った。
出しておいたタオルで体をふく。その間もどこか蘭は嬉しそうで、私の手を離そうとしない。

「…どうしたの?甘えたさん?」
『そうね、そんな感じ』

ぎゅっと、包み込むように私を抱きしめた。蘭、大きくなったなあ…
近くにあった頭をなでると、くすぐったそうに笑った。


「…ラブラブなところ申し訳ないんだけど、」

振り返るとカスミがいた。蘭は離れる気はないのか、抱き着き方を変え、横からぎゅっと抱き着く。やめない蘭にあきれたのか、話を切り替えた。

「おめでとう。強くてびっくりしたわ」
「ありがとうございます」
「それに…なんだかかっこよかった」
「へ?」
「これが勝利の証、ブルーバッジよ」

言葉を聞き返す前にカスミが上手く話を逸らし、バッジを渡してくれた。
かっこいいか。初めて言われる気がする。素直に嬉しい。
隣の蘭のカスミを見る目が警戒になってるんだが、何故そうなった。

「えっと、華音ちゃん、見たところ同い年くらいよね。呼び捨てで呼んでもいい?」
「いいですよ」

アニメ通りの設定で行くと私結構歳上なんだけどな…童顔の自分が悲しい。
敬語も要らないということなので素で付き合うことにした。こっちに来ての初めての女友達だ。蘭は仲間なので別枠です。
またハナダに来た時には会うと約束し、ジムを後にした。

…少々不機嫌だった蘭に機嫌を直してもらうのは大変でした。


溢れんばかりの思いをあなたに
(貴方に少しでも多く、この気持ちを伝えたい)
140203


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