目を開けるとそこには、
美少年の顔がありました――

どういうことなのこれ。いつの間に私の周りは恋愛ゲームの様になっていたんだろう。昨日は疲れてそのまま寝てしまったことは覚えている。この人は不法侵入者なのだろうか。
それにしても…モデルと言われれば納得するぐらいのイケメンだ。美人系というのだろうか…中性的でもある。普通の人には似合わない緑色の髪も彼には似合っている。地毛らしく睫毛も緑だ。睫毛も女の子の様に長い。…美形すぎて見ているのも恥ずかしい。
寝返りをうって逆側を向くとこちらにも絶世のイケメンがいた。こちらは美人ではあるが、その中に男らしさもある。さっきの人はショートだったがこちらは黒のロングヘアー。髪質のよさそうなさらりとした髪。羨ましい。二人ともぐっすりと眠っている。起こすのが申し訳ないが…このまま動かないのも辛い。そーっと間を抜けだそうとすると腕を掴まれた。見れば、緑色の髪の少年だった。

「おはよ…もう朝…?」
「6時くらいかな…はは」
「起きるの早いね」

眠そうにへにゃりと笑う。イケメンはどんな顔をしてもイケメンだ。話していて気付いたが、この声にこの雰囲気。とても覚えがある。

「…爽?」
「どうしたのいきなり名前呼んで」
「うわマジか」

何がどうなって爽が美少年に進化したか分からないが…爽ということなら遠慮なく触らせてもらおう。一番気になっていた髪を触ることにした。見た目通りふわふわのサラサラだ。

「くすぐったいよ…あれ、いつもと感覚が違うような…」
「気付くの遅いよ。手、合わせてみて」

手を合わせて、ようやく自分がどうなっているのか気付いたようだ。細身で綺麗な手だ。女らしい手だけど、私より大きいししっかりしている。

「そっか、僕人間の姿に…ねえ、華音。抱きしめてもいい?」
「いいけど…いきなりだね」
「そういう気分なの」

何故か嬉しそうに私を抱きしめてきた。いつも抱きしめる側なので爽が私を抱きしめるなんて新鮮だ。爽から森の様な香りがした。落ち着くな…

「…お前ら朝から煩い…もう少し静かに黙ってろ…」

隣の黒髪の男性がゆらりと起き上がった。声も聞かなくてもこの威圧感で分かる。この人は夜だ。

「…誰だそいつ」
「うーん…華音の大切なヒト?」間違ってはいないが、なぜそんな夜を挑発するような言葉を選ぶのだろう。寝起きで判断力が鈍っている夜は相手の声が爽ということの気付いていない。

「君、邪魔だからどっか行ってくれる?」
「…ああん?」

爽は抱き締める力を強めた。ああああああ、どんどん夜の機嫌が急降下していく。

「お前、一度離れろ…痛い目に遭わせてやる」
「す、すとーっぷ!!」
「えー、いいところだったのに」
「こっちの身が持たないです…」
「…爽?」
「やっと覚めてきたみたいだ」

愉快そうに笑う爽の姿に、夜は目を見開いた。
…夜は寝起きがすこぶる悪いということが分かった。これからは気を付けよう…

「…二人とも人間の姿か」
「うん。それに…」

爽の体がぱあっと光った。光がやむとハヤシガメの姿に戻っていた。

『好き勝手にできるみたい』

また光り、爽の姿が人型に変わった。

「僕はこっちの方が動きやすくて便利だけど」
「へー…こんなことも起きるんだねぇ」
「ふーん…爽の方が背は高いな」
「ホントだ。見下ろせる」

…見下ろすのは仕方ないとして、二人で挟んでやるのはやめてほしい。私のHPがどんどん削られていく。
ぽんぽんと頭を撫でられた。また爽かと思ったが違った。夜だ。

「…どうかした?」
「…別に」

特に何も言われずに撫でられるというのも不思議な感じだ。

「(お前を撫でられるようになったことを少し感動してんだよ。わかれ)」

夜には撫でられ、爽には抱き締められるという変なサンドウィッチを謎に思っていると、ぐー、と拍子抜ける音が聞こえた。

「…飯行くか」
「そういえば昨日夕飯食べて無かったね」
「…すみません…」

二人に聞かれた。とても恥ずかしい。じゃあ準備してくると言って、この場を逃げ出した。

「夜も、願ったんだね」
「………」
「無言は肯定だよ」
「…何故、叶ったんだろうな」

夜の質問に、誰も答えを返さなかった。


イケメン×2=仲間
(擬人化できると便利だね)(歩きやすいし)(人の目も気にしなくていい)((でも女の子の目線こえー!!))
130813


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