嗚呼、なんて空が綺麗なんだろう。一色に染まった雲一つない空に、私達を照らすように大きな光が輝く。一面には存在を主張するかのようにキラキラ小さな光たちが光って…

『ぶつぶつつぶやいてないで現実見ろ』

…そう、空に浮かんでいるのは月とキラキラ輝く星。現在八時ちょうど。まさに夜です。だってあれだけ迷ったのにすんなり出れるわけがないですよ…夜の体のラインの光と夜目に助けられました。

「…この時間にジムって空いてるの」
『せっかく来たんだし、行ってみよ?』

爽の言葉の通りにジムに向かうことにした。ポケモンセンターで回復した後にジョーイさんに聞いた道のりを走ってジムに向かう。運よく事務にはまだ明かりがついていた。扉の前で深呼吸をして、ゆっくり扉を開けた。

「失礼しまーす…」
「…君、挑戦者?名前は」
「華音です」
「ふーん…タケシさーん、挑戦者だって」

少年がそう呼ぶと、一重の少年が現れた。生タケシに密かにテンションが上がる。

「君が挑戦者か」
「時間大丈夫ですか?」
「今閉めようと思っていたところだからぎりぎりセーフだ」
「ではお願いします」
「じゃ俺審判しますね」

運がいいみたいだ。少年が審判の位置につくとタケシはイシツブテを出してきた。ゲーム通りといった感じだろうか。

『どっちを初めに出すの?』
「ここは岩タイプのジム。爽の方が相性いいから後に任せるよ」
『僕頑張る!』
「夜、よろしく!」
『…わかってる』

投げたボールから夜が出る。…何度見てもカッコいいなんて贔屓目なくても思ってしまう。

「バトルは2対2。挑戦者のみ交代あり…異論はない?」
「はい」
「では…バトル開始!」

緊迫した空気が流れる。先に破ったのはタケシだ。

「イシツブテ体当たり!」
「ジャンプして…アイアンテール!」
「イシツブテ!?」
『…手ごたえ無いな』

イシツブテの攻撃を難もなく避けた夜のアイアンテールがイシツブテの背後に直撃した。地面に激突したイシツブテは動く事なく戦闘不能。一瞬のことだった。そのことにタケシも、審判も驚いている。夜の異常な強さを…改めて実感した。

「驚いた…流石に一発でやられるとは思わなかった。よく育てたな」
「あはは…」

毎回言われるそのセリフに苦笑いしか出ない。

「だが次はそういかない…イワーク、任せたぞ」

予想通りのイワーク。こうして本物をみると大きさを実感する。爽が怯えないと良いけど…

『…僕負けないから…見ててね』

心配は無用だったようだ。

「珍しいポケモンばかり持っているな…草タイプか…?だが、そんな小さなポケモンで敵うかな…」

体の大きさだけで勝負が決まるわけでは無い。爽もやる気だ。私達は…負けない。

「…じゃ、二回戦…開始!」

ゴォーン
いきなりなったコングにどこから持って来たとか聞きたいが、そんな時間はない。先制はこちらがとらせてもらった。

「葉っぱカッター!」

葉っぱカッターは命中したが、イワークはぴんぴんとしている。思ったより頑丈だ。致命的なダメージは与えられていないようだ。

「岩おとし!」
「避けて!」
『うわぁ!!』

落ちてくる岩をギリギリでかわす。逃げた先にはイワークが待ち受けていた…はめられた。

「締め付ける!」
「殻にこもって!」

逃げることを無理だと判断し、ダメージを最小限にした。

「いい判断だ。だがいつまで耐えられるかな…」

追いつめられる…だが、そこからが勝負だ。

「…爽、吸い取る…できるよね」
『任せて…僕、やって見せる』

爽の吸い取るは効果抜群。イワークは苦しみ、体力がどんどん奪われていく。これで後はポケモンの根性の問題だが…タケシがイワークの異常な苦しみに気付く。これは本当に吸い取るだけのダメージなのか。そして見つけた。

「やどりぎの、種…!!」
「隙があったらやるようにと言っておいたんです」

…私の戦略勝ちですよね?タケシに向かって楽しそうに笑う。

「爽、とどめの…」

爽の体は光り出していた。そして光は止み、そこには…

「ハヤシガメ…」
『早く指示!』
「うん…そこから抜け出して!」

進化して力が付いた爽は、楽勝にイワークの腕から抜け出した。

「何!?」
「メガドレインでとどめよ!」

力の増した攻撃にイワークは耐え切れず、戦闘不能。
勝てたことも進化したことも嬉しくて、爽の元に駆け寄った。

「爽やったね!それにおめでとう!」
『華音のおかげだよ』
「…なんか大人になった?」
『…そう、かもね』

前に比べ、落ち着きが増した気がする。ポケモンの成長って早いんだな。少し、お姉ちゃん呼びじゃなくなったのは悲しいけど、進化してくれたことが嬉しいのでそんなのはチャラだ。
近づく足音が聞こえたので顔を上げれば、タケシがいた。そしてその手には…

「おめでとう。君もポケモンも強くて驚いたよ。これは俺に勝った証のグレーバッジだ。受け取ってくれ」
「ありがとうございます」

嬉しさのあまり無邪気に笑うと、タケシの顔が赤くなった気がした。…ここのタケシは女に免疫がないのだろうか。

「あ、あのよかったら今日一緒に夕食でも『帰るぞ』…随分大きな鳴き声だな」
「それでは帰りますね。夜分遅くにすみませんでした」
「あ、ああ…」

これ以上は迷惑だろうから、早めに帰らせてもらうことにした。ほんと迷惑かけました…


今日、トキワの森で進化した二人を見たとき、隠してたんだけど…イラついたんだ。僕だって守れるし、華音の事大切思ってるのにって。その時この感情の名前はわからなかったけど、今ならわかる。それは――


嫉妬
(誘えなかったし名前も聞けなかった…)(俺聞いたよ。教えないけど)(!!?)
130812


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