早く出たおかげで昼にトキワにつくことが出来た。バトルも何回かしたので初めはポケモンセンターだろう。迷う事無くポケモンセンターに向かって行った。
入るとジョーイさんが明るい笑顔で迎えてくれた。疲れた後にこれは癒しだ。つい頬が緩む。

「回復お願いしたいんですか…」
「わかりました」

ジョーイさんにボールを預ける。一応ポケモンセンターのことは話したが、爽は不安そうな顔をしている。これだけはどうにもできないから我慢してもらうしかない。後でいっぱい褒めてあげよう。

「トレーナーズカードはありますか?」
「はい」

トレーナーズカードは今日鞄を整理しているときに見つけた。これはいつとったことになっているんだろう…
受け取ったカードを機械に通す。それからパソコンをつつきだした。

「…ポケモンセンターの利用は初めてのようなので施設の説明をさせてもらいますね。
ここではポケモンの回復だけでなく、トレーナーのためにいろいろ支援をしています。トレーナーズカードさえあれば無料で宿泊と食堂でバイキングが出来ます。他にもここより大きな施設になると他にもっと便利なサービスもあります。是非活用してくださいね」

無料で宿泊とバイキング…そこまでして経営は大丈夫なのだろうか。変なことを考えてしまって心配になる。有難く使わせてもらうけど。これでポケモンセンターに来れば問題がないことが分かった。安上がりなので野宿は最低限にしよう。
他にもためになる話を聞いてちょうど終わったころ、ラッキーが二つのボールを運んできた。

「お待たせしました。貴方のポケモンはみんな元気になりましたよ。旅は大変でしょうが頑張ってくださいね」
『私も応援しているわ』
「はい、有難うございます。ラッキーも有難う」

お礼に撫でると初めは驚いていたが、嬉しそうに笑ってくれた。

「ジョーイさんもお体に気をつけて下さいね」
「あっ、はい!」
「ではまた」

華音の背中をジョーイさんはほんのりと頬を染めたまま余韻に浸るかのようにポーッと眺めていた。

『…天然タラシ』
『女の人なのにイケメンオーラ出てた…』
「?女性に優しくするのは当たり前でしょ」
『『…ハァ』』


何をするにも腹ごなしは必要、ということで食堂に来ていた。お昼どきなので人でにぎわっている。

「何食べましょ…」
『野菜!野菜食べたい!』
「はーい。ブイは?」
『…何でもいい』
「なら食べやすいものでいいか…」

二つの皿にサラダとパン、ウインナーなどを盛り、自分用にはご飯、焼き魚、玉子焼き、味噌汁…という定番の和食を取った。…今思ったけど、ポケモンに人間の食べ物を食べさせていいのかな。いけないとは聞いたことないし、大丈夫かな。

『おいしー』
『……』

二人とも四本足で手が使えないので一生懸命食べてる二人が微笑ましい。

『見る目が気持ち悪い』
「……泣くよ?」
『ご飯終わったら次どこ行くの?』
「買い物かなー。全然物買ってないし」

食後にケーキを食べる。季節のフルーツのショートケーキだそうだ。バイキングでこの味はなかなかだ。和食の後に洋食はおかしいかもしれないが、美味しければいい。

『食後にデザートとか女らしいとこあるんだな』
「…普段どう思ってるの」
『聞きたいか』
「…結構です」

絶対碌な事じゃない。

やってきたフレンドリーショップはなかなか品揃えが良かった。これは買い物し甲斐がある。…でもさっき確認したが所持金は3500円。…旅をなめているのだろうか。足りるわけがない。鞄には調理セットやブランケット等という最低限のものがあったが…

「それでも足りませんよねぇ…」
『どうかした?』
「いや?」

とりあえず買うのは傷薬かな。これからのことを考えると最低限でも毒消し…麻痺直しも欲しい。あとは…モンスターボールを何個か。

『食料も忘れるなよ』
「はいはい…ポケモンフーズか…なかなか高い」
『別にいざとなれば人間と同じものを食べればいい』
「…そうだね。今回みたいに野宿がない場合は良いけどある時は…自炊してもいいかもね」
『…え、料理できるの』

隣を歩いていた二人は信じられない、ありえないという目で私を見る。うわあ、失礼だなこの子たち。

「…そんなに不器用に見える?」
『…えーと………うん』
『不器用の以前に味音痴そう』
「酷いね二人とも…これでも一応教えてもらってたし、料理ぐらいできるよ。女の子だもん」
『『………』』

二人はまだ信用できないという顔をしている。そういうなら今度作ってやる…使用人さん直伝のこの料理の腕を思い知るがいい…!!

『そんな事より会計行くぞ』
「……はい」

所持金ギリギリの買い物を終え、外に出た。荷物の整理のために近くのベンチに座る。…さっき買って来たものがこのかばんに全部入るっておかしいと思う。中は実は四次元ポケットなのだろうか。
整理を終えた後はナナミさんに貰ったタウンマップでこれからのことを考える。なんとこのタウンマップ…本状になっていて持ち歩きやすいプラス索引があって探しやすいという素晴らしいものなのだ。それにガイド誌のようにおすすめスポットも書いているので観光にもお勧めです。

「次向かうのはニビか………」
『…どうしたの華音お姉ちゃんいきなり黙って』
「いやね、ここからニビに向かうにはどうしてもトキワの森ってところを抜けなくちゃいけないの」
『…森、虫でも嫌いなのか』
「別に嫌いじゃないよ。虫ポケモンなら好き」
『ならなんだ』

タウンマップで顔を隠し、ブイたちの視線から逃れながら呟く。

「とても言いにくいのですが…」
『さっさと言え』

ブイに鋭く言われた。ああ、言うしかない。

「トキワの森って、天然の迷路と言われていて…あの…私………方向音痴なんです。えへ」
『『………』』
「…黙んないでよつっこんでよ恥ずかしいじゃん!!いや、違うんだよ…初めて言った場所のみで、理解したら迷わないんだよ。だから二回目は迷わない!だから方向音痴とは…」
『一緒だろ』
「うぅ…駅や建物みたいに所々に案内板があったら迷わないんだよ。地図も似てるかもしれないけどこんなに縮小された図じゃ参考にもならないよ…」
『泣かないでよお姉ちゃん…』

ベンチで正座している人をポケモンが慰めてるって…他から見たらどれだけ奇妙なんでしょうね…

『…深刻な問題だね』
『……はぁ』
「ごめんなさい…」

ここに飛べるポケモンがいれば空から…だなんて現実逃避をする。

『…あれ、ここまではどうやってきたの?』
「勘」
『『………』』

二人ともこれはヤバい、という顔をしている。うんごめん。

『…まぁ、行くしかない』
『さっき、そこしか行き道ないって言ってたしね』
『迷った時にはどうにかする』
「申し訳ないです…迷惑かけます」

さて、私は無事にニビにつくことが出来るのだろうか…
………多分無理だろうな。


準備は入念に
(よそ見はするな。絶対ついてこい)(はぁい)(…わあ、お母さんみたい)
130812


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