ブイがいつも通り、部屋で静かにソファーに寝転び、昼寝をしていると、外からドタバタと不愉快な音が聞こえてきだした。
どんどんと近付いてくる音に眉を潜め、ゆっくりと目を開ける。
少し経つと、バンッと、激しくドアが開き、部屋に少女が入って来る。
「ブイ、はっぴーはろうぃーん!」
「…発音ぐらい良くしろ、馬鹿。
しかも何だよ、その格好。…コスプレ?」
ブイの前に現れたのは、黒い猫耳を付け、いつもと違う格好をした、相棒の華音だった。
それを見ると、ブイは溜息をつきながら起き上がり、ソファーに座り直した。
座ったブイに、華音が笑いながら近付いてきた。
「ツッコミが痛いよブイ君…;
仮装っていってよ、かーそーう!
今日ってハロウィンじゃん!」
「…もう、んな時期か」
「そうそう、んな時期!
…えふん、じゃ、trick or treat!
お菓子くれなきゃイタズラしちゃうぞ☆」
「何でそれは無駄に発音良いんだよ。
後、☆ウザイ」
「だまらっしゃい!!
それより、お菓子!お菓子は?」
華音がブイに手を出して、目をキラキラさせ、お菓子を渡せと催促するが、ブイはそれにびくとも反応せず、溜息をついて口を開いた。
「俺が菓子なんて持ってる訳ねぇだろ」
「…ですよねー…じゃあ、イタズラOKって事だね!」
いじけていた華音だが、その事を思い出すと、ニコニコと笑い出し、ポケットから"油性"マジックを取り出した。
「何書こっかなー、やっぱり可愛いとか?効力ありそうだよね♪
普通にぐるぐるとか描くだけでも効果ありそうだし、あぁでもあれも…」
そう華音が楽しそうにブツブツ呟いていると、気を抜いたうちにブイにマジックを取られてしまった。
「…あ、ブイ返してよ!とりあえず思い付いた事を書こうと思ってたのに!!」
「誰が書かせるかっての。…ん、イタズラ終了」
ブイは華音からマジックを奪うと、それで逆に華音の顔に落書きをしだした。
…その"油性"のマジックで。
「ぎぃゃぁぁあああ!!!
ちょっ、ブイの馬鹿ぁ!!!
これ油性って言ったじゃん!
今から一生懸命落とせば大丈夫なハズ!
覚えとけよ、ブイ!!」
「ハイハイ」
華音は洗面所へとダッシュで向かっていたが、途中で誰かにぶつかってしまった。
少しこけそうになったが、誰かが支えたお陰でこけずに体勢を戻すことが出来た。
顔を見ると、それは彼女の仲間である爽だった。
「危ないよ、お姉ちゃん。部屋の中で走ったら怪我するし…」
「有難う、爽…」
「…それより、それ…どうしたの?」
「…あ!!!!ねぇ、聞いてよ、爽!
ブイってば、ちょっとイタズラしようとしたくらいでこんなことするんだよ、酷くない!?」
「確かに酷いけど…何かブイらしい、愛のこもったイタズラだね」
「はぁ…?」
「ううん、何にもないよ」
爽はそう言うと、華音を通り過ぎ、リビングへと入っていった。
華音は不思議に思いながらも、洗面所に向かい、自分の顔を見る。
見た華音の顔はどんどん赤に染まってゆく。
「―ッ、ブイのー…馬鹿ぁあ!!!///」
“コレ、俺の”
(それは彼が残した小さな独占欲)
何コレ?な話に…
ブイは独占欲強いと思う。
これは決定事項である←
異論は認めま…す←