目の前にはニコニコと頬杖をついて微笑む持田さん。
黒っぽい、でも重たさを感じさせない服装は彼にとても似合っていて、落ち着いた雰囲気のカフェでも俺のように浮くことはない。

「あ、あの…」

「うん?」

勝手に頼まれたコーヒーに手を伸ばし一口すする。
濃くもなく薄くもなく。なるほど。確かにおいしい。
持田さんが俺を連れ出した理由に納得して、静かにカップを置いた。

「どうして、俺なんですか?」

ずっと聞きたかった。自惚れなんかではなく、間違いなく彼は自分に好意を持っている。というか、ところ構わず公言しているのだから疑う方がおかしい。
でも自分がどういうやつかなんてそりゃあもう自分がよく知っている。
チキンで技術的にもまだまだ劣る自分なんて、そもそも日本のサッカー界を今やリードしているといっても過言ではない持田さんの目にどうやってとまったのかさえ謎だ。

「どうしてってさ!ほんと、椿君ておもしろいよね。君のそういうとこ、嫌いじゃないよ」

彼が何をどう取ってそう言う返事になったのかは彼にしか分からないが、少なくとも俺には理解できない。天才の考えてることなんて。

「それさ、言わなきゃいけない?言葉にしないとダメ?それくらい自分で探してよ。もっと俺のこと知ってよ俺に興味を持って。俺がいないと息すらできなくなるくらいに俺に溺れてよ。俺以外、いらないっていうくらい」

ざわりと空気が冷ややかになる。
彼の口元は弧を描いてるくせに目は笑ってない。否、あのときの笑顔だ。絶対的な強者を思わせる笑顔。
本能的な恐怖を覚え、握られた手のひらはしっとりと湿っている。
何か言おうにも先ほどコーヒーを飲んだはずなのに、のども口内もからからに渇いて声が出ない。

「だからさ、俺に食べられて」


ああ、

























最後のセリフを言わせたいがため!
モチバキの日おめでとう!(遅刻)




111008








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