あまり勉強は得意ではない。
小学校の一件でサッカーを始めてから、1にも2にもサッカー。勉強の優先順位はいつもその次だった。
そして中学3年生。
いくら推薦が決まりそうだからといっても勉強をおろそかにはできない、と母が突然言いだした。
今までなにも口を出されなかっただけに驚いた。
おっとりとした父も苦笑しながらゆっくりと頷く。
姉はさも当然だというような顔をしていた。
そして、その宣言から一週間後。
家庭教師がやってきた。

「えーっと、教える科目は数学と国語で間違いない?」

「あ、えと、はい…」

うすい茶色の髪に緑色のコート。やる気があるのかないのか分からないような表情。
達海と名乗った彼は、ペンの尻でカリカリと頭をかいて薄っぺらい資料をめくる。
あれにはおそらく母が書いたであろう俺の苦手科目や成績なんかが書いてあるのだろう。


「とりあえず今日はどれくらいできるか見るだけだから」

彼は赤と黒のストライプのファイルを取り出すと、B4サイズのプリントを2枚取り出し粗雑に俺の前に置いた。

「時間制限はなし。解けたもしくは解けなくなったらいって」

国語は簡単な漢字書き取りと古典漢文の文法。
数学は二次方程式などの計算問題が数問。
けして難しくはないであろう問題を前に、シャーペンを握り解き始める。
ちらりと先生の方を見やれば、あくびしながらサッカー雑誌を読みだしたではないか。

確かに何しようと彼の勝手だが、少しだけ、不安になった。

「あの…」

「ん?」

「お、わりました…」





も、もう無理…

111004







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