あいつの隣を歩かなくなって数ヶ月たった。
携帯の着信履歴は半年前が最後。

息苦しくなって散歩がてら歩いた近所の並木道には、黄色いパンジーが点々と咲いていた。








この並木道。あいつを迎えにいったとき、見送るとき、そういえばいつも二人で歩いたな。
この先の交差点が終点。
それが嫌で、示し合わせたように二人の歩調は普段よりも数倍ゆっくりだった。
道中たくさん話した。
サッカーのことも、それ以外のことも。

『幸せって、一体なんなんでしょうね』

『優しさもよくわかんないです』

困ったような笑顔が脳裏に浮かぶ。
あいつはよく俺に質問した。
他愛のないことから哲学っぽい小難しいことも。
俺とあいつは親子くらい年が違うのに、答えられたものは少ない。
今でも会話を思い出しては時々考える。
『幸せ』か。
あぁ。なんだ。全然難しくない。
きっと、それは地球が明日滅亡するくらいの確立でも、この並木道の先にお前がいたら、俺は幸せだ。

薄く雲のかかった空を見上げる。

お前さ、泣いてんじゃねえの?
ガラにも泣く心配してんだぜ。
お前は人前で泣けるやつじゃないから、静かに誰にも見つからないように、泣いてんじゃないのかって。
でも、俺がそんな心配してるって知ったら、いつものようにクスって小さく笑うんだろ?
それも予想できるから。
俺?泣いてるわけないだろ、ばかやろう。
でも、どんな顔していいかわかんねえから、こうやってお前との会話思い出してププって笑ってやるんだ。

だだっ広い空を覆ってたうろこ雲の隙間からたくさんの光の筋が漏れ出す。
赤青黄色。
何色だっていい。
まだ俺とお前をつなぐ線があるのなら、大切にしたい。

「なあ、椿」

走れる足があったならば。
そしたら、もし、お前がうつむいて不安や悲しみを背負ってるなら駆けつけてやるのに。

ほら。並木道にパンジーが咲いてるぜ。

『パンジーの花言葉、知ってますか?』

『なんつうの?』



『私を、思ってください』




ああ、思ってやるさ。
お前が気づくくらい、な。















某アイドルグループの新曲から。
思わず滾ったんだ。

20110420











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