ふっと吐いた息が白く彩られて空中を漂っていく。
ひらひらと空から落ちてくるものは容赦なく身体から体温を奪っていった。
ああ、寒い。
snowpresenter
寒波が襲ったこの年末年始は、例にもれず寝正月としゃれこんだ。
方々から送られてくるあけおめメールを総無視しこたつで惰眠をむさぼっていると、ひっきりなしに鳴っていた着信音とは違うメロディーが流れ始める。
彼らしい色気のない真黒な文面。
新年のあいさつもそこそこに、本題であろう用件がこれまた短く所在なさげに書かれていた。
逡巡すること数秒。
やることもないし断る理由もないので了解、とだけ返事を書く。
珍しいあいつからの誘いで嬉しい、なんてことはない。
かろうじてジーパンに履き替えると携帯と財布だけつかんで足早に部屋を飛び出した。
空は、どんよりとしている。
「あ…」
ピークも過ぎたのか人もまばらな境内に着いて一通りあたりを見回すと、いつも通りの恰好でいつも通りのあいつがたき火の近くで暖をとっている。
彼は自分と向き合うように立っていたため、自然と目が合った。
「あけまして、おめでとうございます…」
「…ああ」
少しだけはにかむように告げられた挨拶をろくに返せず、視線を逸らす。
白のマフラーも茶のダッフルコートも黒のチノパンも全部知ってる。
きっと中はあの訳の分からない柄のパーカーに違いない。
そこまで予想がつけれるほど、一緒にいたはずだ。
なのに。
火に照らされ赤く染まるこいつに見惚れた、だなんて。
冗談もいいところだ。
「とりあえず、お参りしますか?」
「そう、だな」
地元の小さい神社のため大した距離もなく、すぐに賽銭箱の前に着いた。
財布から十円と五円を取り出し投げ入れる。
ひと足早く賽銭を終えた隣の椿は、型どおりの二礼二拍。
自分もそれにならい、静かに目を閉じる。
何を祈ろう。
健康?優勝?
ちらりと隣を見る。
そうだな。
こいつと、ずっと一緒でありますように。
「ザキさん、はい」
とうとう降りだした雪を背景に椿が俺に手渡したのは湯気の立つ甘酒。
一口口に含むと何とも言えない甘さが広がった。
「あ、大丈夫でした?」
「嫌いでは、ない」
「よかった」
椿はにこりと笑ってはあっと息をはく。
白い。
「それにしても冷えますね。明日は積もるのかな」
マフラーに手袋と完全防寒じゃないか、とは言えない。
末端冷え症なんです。そんな会話をこの間したばかりだ。
「ね、ザキさん。手を、繋いでもいいです、か?」
言うのが早いか、そっと冷たい手が触れた。
わざわざ手袋を外したのか。
「聞かなきゃ、繋げないのか?」
少しだけ挑発するように言えば、触れるだけだったのがギュッと握るように力が込められる。
「そんなことないっす!」
顔の赤い椿と目があう。
今年もいい一年になりますように。
なんてな。
ぶっつん!
もう無理だよ!
てか誰だこいつら!(土下座
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