もう終わるんだ。

黄色く色づいた街路樹を眺めながら思う。
シーズンも終盤に近い。
あれから勝って勝って、負けて負けて。
残念ながら序盤の連敗がたたってタイトルを狙える位置にはいないものの、今までにない高順位に町も人も、自分たちも浮き足立っていた。

監督が新しくなって迎えた今シーズン。
降ってわいたようなレギュラーに戸惑いながらときには迷いながら、自分の武器を見つけ役割を見つけふらつきながらも走り抜いてきた。
それは確かに自分の経験値になり自信となった。
しかし比例するように不安も重圧も増えていくわけで。
押しつぶされないよう両足踏ん張るのが精一杯。
今シーズンは乗り切れそうだ。
なら来シーズンは?その次は?
いつまで使ってくれるかわからないこの世界に、一体自分はいつまでいれる?

「ああ、もう!」

考えだしたらキリがない。
いつの間にか止まっていた足を動かす。
乾いたいちょうの葉がつぶされ軽い音がした。
葉を運ぶ風は冷たい。

「椿、」

いちょう並木の先に見慣れた影を見つけた。というか見つかった。

「お前な、待ってろって言ったろ」

いつもと同じ緑色のジャケットを羽織ったその人は、巻いていたマフラーを外すと何もいわずに俺の首に巻き直した。

「え、あ?」

「プロが風邪とか笑えねえぞ」

口をとがらせても存外優しい目がそれを打ち消してしまう。

「それは、監督も一緒だと、思います」

首もとから監督の匂いがする。
安心する匂いに顔をうずめて、ゆっくり息を吐いた。

あの曲者揃いのチームを引っ張っていけるのはこの人しかいないだろう。
降格だとかの危機に晒されることも、もうないかもしれない。

「言うじゃないの。うん?」

「す、すいません…」

そんな人をきっと世界はほっとかないだろう。
世界は言い過ぎかもしれないがこれからもっと注目されていくに違いない。
そのとき自分は。
俺は果たして彼の隣にいられるのか…?

「…椿?」

一向に進もうとしない俺にじれたのか、優しく声をかけられた。

「俺、俺…もっとうまくなります」

あなたが指揮をとるのに困らないように。
あなたの近くにいられるように。

「もっとうまくなって、あなたに必要とされたい…!」




紅く染まる願い












もやっとバッキー
無理矢理感が否めない



101110







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