部屋で着替えたり騒がしく準備をしていると、お母さんがやってきた。「どこかへ行くの?あ、分かった。あの男の子でしょ」なんてきゃあきゃあ言うから部屋から追い出したら「図星ね」とかどや顔で言っていた。
急いで選んだ白のワンピースを着て、外国のアニメキャラが走る時に起こす砂嵐みたいなのを私も起こせるんじゃないかというくらいにダッシュをして、大きな木の下で待っている真琴くんの元へ向かった。
「真琴くん。お、お待たせしました」
ゼエハアとやかましい息を必死に整えて、ぺこりとお辞儀をした。そんな騒がしい私とは相対的に、真琴くんはにっこりと微笑み私にゆっくりと近付く。
「美代子ちゃん、来てくれたんだね」
ぐるぐるしている頭の中で、なんともおかしなことを言うなと感じた。約束したんだから、来るに決まっているのに。真琴くんは本当に腰が低いというか、優しい。
「もちろん。約束したから」
「そっか。うん、そうだよね」
真琴くんはくすくすと優しく笑う。
「おかしいね。美代子ちゃんのことなら、なんでも嬉しくなっちゃうんだ」
そんなこと言われたらまたじわじわ来てしまう。不思議な暖かさが胸を覆い尽くしてしまう。私はこの謎の感情が少し好きだけどちょっとだけ苦手だった。何だか、ドキドキしてしまうから。
「ほら、行こう」
真琴くんが少し腰を屈めて、私に大きな手を差し出す。私は数秒ぽかんとした後、こくこくと頷いて真琴くんに手を差し出し、そっと繋いだ。なんだかとても暑い。