「せい…やあっ!」
「美代子、無理だよおおおぉ」

私の首後ろに手を回し一生懸命抱きつく真琴くんは、悲鳴か雄叫びに似た声をあげる。
どうしても真琴くんをお姫様だっこしてみたくて挑戦しているんだけど、なかなか難しい。どんなに力や気合いをいれても真琴くんの足は地面にぴったりついたままだった。身長がかなり高いから本当に難易度が高い。

「美代子。もう諦めてよおぉ」
「諦めない!」

真琴くんの困ってる顔が凄く近くて、首後ろが暖かくてすごく幸せだった。大好きな人とこんな近距離にいられるんだからそれは嬉しいに決まってる。そしてお姫様だっこを達成できたらもっと嬉しいに決まってる。
高身長で筋肉もむきむきでイケメン。だけどまるでヒロインのように柔らかい存在の真琴くんをお姫様だっこ出来たら、私は真琴くんの王子様になれるような気がする。だからやめない。

「もうお願いだから…俺重いし、美代子の腰を痛めちゃうよ」
「だいじょうぶ!」

何が大丈夫なのか私にも分からなかったけど、愛すべきお姫様を心配させるわけにはいかないから大丈夫と言っておいた。最後の力を振り絞り、ふんぬと真琴くんをじわりじわりと持ち上げる。

「あっすごいよ美代子!俺の足が少し浮いた!」
「や、やったぁ」

ついに、ついに達成した。いや達成できたか微妙かもしれないけどこれはもうこれでいい。周りから見たらきっと私という王子様が真琴くんというお姫様をだっこしているように見えるに違いない。

「美代子はすごいねぇ。王子様みたい」
「え、えへへ…ありがとう」

イケメンお姫様は可憐に微笑む。その笑顔だけで疲れが吹っ飛んでいった。







「…何やってるんだ、あいつら」
「ハルちゃん、見ちゃダメだよー」


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