ちょっと気まずいけど、いつも通りの時間に海へ行く。また真琴くんと距離が遠のいてしまうのではないかとか、そもそももう来なくなっちゃうんじゃないかとか心配でならなかったけど意外や意外、真琴くんは普通に岩に座っていた。でもその横顔はなんだか悲しそうで、胸がどきりとした。
真琴くんは気配に気付いたのかこちらに振り返る。私を見て、困ったように笑う。頬にはかなり赤みが差していた。
「美代子ちゃん」
「こ、こんにちは、真琴くん」
「うん。こんにちは」
真琴くんはいつも通りの挨拶をする。いつもの真琴くんだ。何も変わらない真琴くんだ。そう思ったけど、顔はやっぱり悲しそうで。
「昨日、変なこと言ってごめん」
まさか昨日の話題に触れてくるとは思わなくて。私はかなり焦る。
「え、あ、いや。変なことだなんて」
「困ったでしょ。ごめんね」
「いや、えっと、それより真琴くんは大丈夫なの?タブーって言ってたから」
「そうだね。もしかしたらくらげや昆布になっちゃったりするかもしれない。ないとは思うんだけど」
結局どっちなんだ。人魚の真琴くんにも分からないんだから私にはどうなるのか全然想像がつかない。
「でも俺、何があっても絶対に美代子ちゃんを諦めないからね」
真剣な眼差しの真琴くんに、どきんと胸が跳ねるように鳴る。真琴くんて、こんなに積極的な人だったのか。