※男主

「江ちゃん!」

両手を祈るように合わせて叫ぶように呼ぶと、彼女はうわまた来た最悪といった感じの顔をする。

「そのげんなりした顔もきゃわいい」
「なんですか、その言い方…」

何故彼女が俺に敬語を使うのかというと答えは簡単で、俺が二年生だからである。後輩という設定が合わさって江ちゃんは更に天使になっている。

「江ちゃん。俺、江ちゃんのこと絶対大切にするから」
「だから付き合えと?それ毎日言ってますよね先輩」
「だって付き合いたいんだもん」
「付き合いたいんだもん、じゃない!だいたい私、筋肉がない男性はダメなんです。せめて遙先輩や真琴先輩くらいないと」
「えっ、よりによってあの二人!?(あれになるのは厳しいだろ…)」
「だから先輩、鍛えて直してから来てください」
「七瀬や橘になるのは無理かもしれんが、俺ちょっとなら筋肉あるから!」

高らかに叫び、制服のシャツを両手でガッとたくし上げて江ちゃんに腹の微妙な筋肉を見せる。これではただの露出狂、変態みたいだがそんなこと知ったこっちゃない。

「皆無に等しいじゃないですか」

江ちゃんのストレートな言葉に、俺は無言でシャツを下ろした。皆無と言われたらさすがにへこむ。でも諦めない。

「江ちゃんを好きな気持ちなら誰にも負けない!だから!」
「もう、しつこい!お兄ちゃんに言いますよ!」
「えっお兄ちゃん…!?」

松岡凛くんのことですよねそれは。実際対面したことはないけど、鮫塚を通りかかった時に江ちゃんと似た雰囲気を持ったイケメンを見つけたからきっとあれがお兄ちゃんなんだろう。優しそうな雰囲気はあったけど、なんか噛みつかれそうな恐ろしさもあった。

「お兄ちゃんに噛まれるんじゃないの俺」
「噛まれるかどうかは知りませんけど、多分怒りますよ」
「………」

俺がげんなりだ。あんな筋肉あってたくましくてイケメンなお兄ちゃんに喧嘩吹っかけられたら敵うわけがない。即、敗北だ。というか好きな子のお兄ちゃんと戦いたくない。

「それでも、俺は江ちゃんを諦めないよ。好きなんだもん」
「ちょっ…すきって、そんな、ストレートに…」
「好きなんだもん」
「二回言わなくていいっ!もうっ勝手にして下さい!」

顔を真っ赤にしてぷんすか怒る江ちゃんが可愛くて可愛くて、やっぱりこの子が好きだなあと思いました。まる。


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