休み時間。めちゃくちゃ暑いので自分の席でぐったりしていた。暑さにやられた動物園の動物のようにぐったりしていた。
「美代子、どうしたの」
柔らかい声が上から降ってきたので顔をあげる。真琴くんがいて、彼が頻繁にする「眉を下げた困り顔」を浮かべていた。
「しんどいの?」
「しんどいっていうか、だるいかな。暑くて」
「ああ…今うちの教室、クーラー壊れてるものね」
「そうなんだよ」
再び体をでろーんとさせて、机に全てを任せる。真琴くんはそんな私を心配してくれたらしく、しゃがんで手をうちわのようにして、あおいでくれた。大きな手からそよそよと風が送られてきて気持ちがいい。
「元気になーれ」
そんなことを言う真琴くんが面白くて可愛くて、思わず吹き出した。
「どう?」
「元気になったよ」
「良かったぁ」
「ありがと。真琴くんパワーだね」
「えぇ。なにそれ」
「真琴くんにしか出せないパワーだよ」
真琴くんはくすりと笑う。
真琴くんパワーとは、真琴くんの魅力から成るビームのようなものだと思っている。
彼のそばにいるとふわふわした感じになってほわっとした気持ちになることが出来るのだ。もう本当に彼が私に話しかけてくれて、心配してくれて、風そよそよをしてくれて、笑ってくれることがとても嬉しい。すごく幸せになれる。元気が出る。
あれ。もしかして私、真琴くんのこと。ほにゃららなのでは?
ガバッと顔を上げて、真琴くんの顔をじいいっと見る。うん、やっぱり間違いない。
「どうしよう真琴くん。気づいてしまったよ」
「な、何が?」
真琴くんはびっくりしたみたいで目をぱちくりさせている。
「私、真琴くんのこと、すごく好きみたい」
真琴くんはぼふっと音が鳴るんじゃないかと思わせるくらい一気に顔を赤くさせた。どうしよう可愛い。かっこいい。