最近真琴くんは私を見ると海に飛び込んだり岩陰に隠れてこっそりこちらを覗くような人魚になってしまった。
私、何かしたのだろうか。彼の嫌がる何かを。
今日も私を見たら逃げようとする真琴くんだったけど、手をがしっと掴んで捕まえた。
「真琴くん、私のこと嫌いになった?」
「え、いや…そんなことないけど」
「だったら何で逃げるの」
じっと目を見て話しかける。真琴くんは目をカッと開いて、何故か顔を少し赤くして、そして動揺したように視線を逸らす。
「だって、だって、俺…」
真琴くんは目を伏せる。
私が、私は何をしてしまったんだろう。どうしよう。どうしたらいい?
「どうしよう真琴くん。私、真琴くんに嫌われるのいやだ」
「え」
真琴くんに嫌われるのは、私にとってすごくすごく恐ろしくて怖いこと。何よりも嫌なことだ。
「何かしたなら謝るから!」
「いや、違うって…美代子ちゃんのこと、嫌いなんかじゃないよ」
「じゃあどうして避けるの」
「それは、」
真琴くんはぐっと言葉を詰まらせた。けれど数秒してから、ゆっくりと水に濡れた口を開く。
「…最近美代子ちゃんに会うと、変な気持ちになるから、耐えられなくて」
「へん?」
「胸がざわざわするっていうか、なんていうか…これ、多分、」
「え?」
「な、なななんでもないっ!とにかく美代子ちゃんのことは絶対嫌いになんてならないから!」
ざっぶーんと海に飛び込み真琴くんは姿を消す。また、逃げられた。でもとにかく私のことを嫌っていたわけではなさそうで、良かった。明日からはまた普通にお話出来るような気がする。
けど、何だろう。最近私まで胸がざわざわしている。