今日の真琴くんはいつもの真琴くんではなかった。ふんわりとした笑顔はなく、ちょっと拗ねたようにムーッとしている。そしていつもなら美しい姿勢でお気に入りの岩の上に座っていたりするのに、今日は適当な岩の上でデローンとうつ伏せで寝転がっている。
「どうしたの真琴くん」
尋ねてみると岩の上で体を一回ごろりと回転させて、おでこが完全に見える逆さまの顔を私に見せる。
「美代子ちゃん。さっき一緒にいた男の人……だれ?」
視線を逸らして、少し暗めのトーンで言葉を落とす。
「え?あぁ、見てたのか。昔のクラスメートだよ」
「ただのクラスメート?」
「そうだよ?滅多に会わないから懐かしいねーって話してたの」
クラスメート以外の何者でもない。真琴くんの言いたいことが私にはいまいちよく分からない。
「ならいいんだけど、ちょっと気になっちゃって」
「気になるって、何が?」
真琴くんの顔を覗き込むと、両腕で顔を覆って隠してしまった。どんな表情をしているのかな。見えない。
「どうしたの真琴くん」
「ううん…なんというか」
「具合でも悪いの?」
「なんでもない。本当に、なんでもないよ」
「でも」
「ううー…言うの恥ずかしい」
ひときわ変な真琴くん。とても不思議だったけど、聞いてほしくないみたいだったから聞かないけど、気になる。