「江ちゃんかわいいー」
「ええっ」
そいやっと声を上げて勢い良く江ちゃんの背後から抱き付いた。恥ずかしそうに「やめてよぉ」と体をよじる江ちゃん。顔は見えないけど耳は真っ赤だ。あぁかわいい。
「…何やってんだお前ら」
「あぁっ、お義兄様ではないですか!」
じたばたする私と江ちゃんを見て、麗しき兄の凛くんが若干引いているような顔をする。
「お兄ちゃん、助けてよぅ」
「………」
「もう何とか言ってよお兄ちゃん…美代子っ離して!」
江ちゃんに絡みつかせていた両腕を離す。江ちゃんはうぅーと唸りながら、私をじとっとした目で睨んだ。あぁかわいい。
「美代子!いつもいつも羽交い締めにして…いい加減にしてよね!」
「ごめんね江ちゃん」
「全く…お兄ちゃんもお兄ちゃんよ!」
凛くんは「えっ俺?」みたいな表情を浮かべた。まさか自分に矢が来るとは思わなかったんだろう。
江ちゃんは兄をズルズルと引っ張り遠くへ連れていってしまった。私からかなり離れた位置で立ち止まり、何か会話を始めていた。
「江、痛い」
「いくら美代子の前で緊張してるからって、ピンチの私をスルーするなんて…ひどいよ」
「なっ…!緊張なんかしてねぇ!」
「うそだぁ。だってお兄ちゃん、前から美代子のこと気になって」
「うるさい!」
うまく聞こえない。
けど何回か会話を交わしているうちに、凛くんが江ちゃんに飛びかかってさっきの私と江ちゃんのような状態に発展してしまった。それでも江ちゃんは幸せそうな顔をしている。大好きなお兄ちゃんとお兄ちゃんの筋肉を真近に感じているんだもんね。
私はどうやら、お義兄様にはかなわないみたいだ。