真琴くんが浜辺を歩こうと言ったので学校が終わったあと二人で歩くことにした。
これはもしかして、デートのお誘いではないかと考えた私は心臓をばくばくさせながら授業を過ごし、放課後の教室に真琴くんが迎えに来てくれて浜辺に行くまでもずっとばくばくさせていた。
「ねぇ美代子ちゃん。綺麗な石があるよ」
ばくばく星人と化した私に、真琴くんは優しく話しかけてくれる。その場にしゃがんでくすんだ緑色の石を取って、私に渡してくれた。
「この石、」
「なぁに?」
「真琴くんに似てる」
彼が近くにいるせいで心臓はうるさいけど気持ちは少し落ち着いた。この石を持ち帰って、真琴くんの石と呼んで、大切にしなければ。
真琴くんは口元に手を当ててくすりと笑う。
「なかなかロマンチックなことを言うね、美代子ちゃんは」
「そう、かな」
真琴くんはしゃがんだまま、また石を探し出した。石を避けたり拾ったり戻したりしている。
「みつけた。これもあげる」
立ち上がり、はいっと言って私に差し出してくれたその石は、白くて透明感のある水晶のような石だった。
「これも綺麗だね」
「うん。これはね、美代子ちゃんに似てると思って」
「えっ」
手のひらの白い石を見つめる。こんなにクリアで穢れを知らないような石が私なんて、なんとまあ。真琴くんはやっぱり優しい。
「ありがとう。ふたつとも家宝にする」
「あはは」
首を少しだけ傾げて微笑む彼には大型犬に似た可愛らしさがあった。
真琴くんは私にとって、大好きな人であり可愛い人であり世界で一番かっこいい人。
「美代子ちゃんが喜んでくれることが、一番嬉しい」
顔を赤くして、目を合わせないで言葉を落とす。その仕草も可愛くてかっこよくて。こんなに愛らしい男子は他にいるだろうか、いやいまいと自問自答するくらいに愛らしかった。