「あのね、」
お願いがあるという俺の言葉に、田中さんは首を傾げる。
これを合わせて今まで何回、田中さんにお願いをしただろうか。俺、欲張りだよな。彼女と共有したいことがたくさんありすぎて、困るくらいだ。
今回のお願いは前からずっとずっと、やりたかったこと。
絶対してみたかったこと。
これができたら、もっと心の距離を近づけられて、本当にそばにいられるような気がするから。
だから、
「美代子ちゃんって、名前で呼んでも、いいかな…?」
彼女は一瞬びっくりしたような顔をみせたてからぱちぱちと瞬きをし、嬉しそうに笑って何度もこくこくと頷いてくれた。
無邪気でちょっと変わった君を見ていると、俺も幸せな気持ちになる。
何だかたまらなくなって、お願いもしないで美代子ちゃんをぎゅっと抱きしめた。