今度は体育館裏ではなく、校庭の端っこのオオイヌフグリがたくさん咲いている場所に連れていかれた。

「田中さん。今度もし逃げちゃっても、俺追いかけて捕まえちゃうからね」

今日、というか今この時の真琴くんはいつもほどふわふわしてない。強気だ。そんな真琴くんもいい。最高、素晴らしいブラボーと感じている自分はやっぱり生粋の真琴くんストーカーなんだと思い知らされる。

「俺も、もう逃げないから」

真琴くんの発言に、私は耳を疑った。彼は今まで何から逃げていたのか私には分からないけど、真琴くんの強い言葉に身がぶるりとなった。

「田中さん、あのさ」
「う、うん」

何を言われるんだろう。まだストーカーしてるよねとかいい加減にしてくれないかなとかだったらこの場で絶対倒れる。耳を塞ぎたい。けど真琴くんが何故だか真剣だから、そんなことは出来ない。彼に失礼だから。

「俺を見るのは迷惑だからもうやめるって言ってたけど、やめなくていいんだよ」
「え?」
「むしろ、やめないでほしい」
「へ?」
「って言ったら、気持ち悪いけど」

ゆっくりと時間が流れていく。何かしてないと落ち着かなくて、スカートをぎゅっと握りしめる。
やめないでほしい、とは。どういうことだろう。真琴くんをストーカーするのを辞めなくていいの?普通嫌なんじゃないのか。

「言うよ。もう、言うからね!」

真琴くんは男らしく力強く「言う」と言った。けれどもその割には、徐々に困ったように眉を下げて真っ赤な顔になって黙ってしまう。可愛い。
しかしふるふると震えるきれいな形の唇は開かれる。頑張って勇気を振り絞ったように。
風がさあっと流れた。

「…俺と、付き合ってください」

あれ。あれ?
なんだろう彼のこの言葉は。意味が分からない。よく分からない。なんだか胸が苦しい。息がしにくくなる。頭が、体が、沸騰しそうなくらい熱い。
もうわけが分からなくなり、私は無意識にその場に卒倒した。真琴くんの「えっ!?」という叫びが聞こえる。そして私の苗字を何度も呼んで焦る叫びも。
でも、私は返事が出来ず意識がなくなっていった。


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