今日は水泳部の皆さんと海に来ました。ギラギラした太陽、ゆらゆら揺れる海、ゴミひとつない砂浜。この光景を見たら海大好き泳ぐの大好きな人は喜ぶだろう。だけど私は深い深いため息をついた。

だって、私、泳げない。

遙先輩はもうバッシャバッシャ泳いでるし、怜くんはバタフライを頑張って練習している。真琴先輩はそんな怜くんを母親のように見守っているし、江ちゃんはいつものように恍惚の表情を浮かべている。

私も一応スクール水着を着てきたものの、泳げないので砂浜に座り込んでいるだけだった。そんな哀れな私の隣に、渚くんは座り込む。

「美代子ちゃん、泳げないから拗ねてるんでしょー」
「拗ねてないよ」
「嘘だぁ」
「拗ねてませんー」
「ふふっ。泳ぐの楽しいよ?」
「だって泳げないんだもの」
「ああ言えばこういう、だねぇ」

目を細めてじろりと渚くんを見るが、全く効果はないようで、にっこにこしているだけだった。

「美代子さん、泳がないんですか?」

海から上がってきた怜くんが私に声を掛けてくれた。

「ほら、私、泳げないから」
「そうなんですか。僕が教えましょうか?」
「い、いやぁ……」

気持ちは有難いんだけど、怜くんに教わったら更にカナヅチになりそうな気がしないでもない。失礼な考えだけど。

「うーん。俺思うんだけど、竜ヶ崎くんって教えられるのかな」
「無理でしょうね。私だったら泳げる気がしないもん」

苦笑する真琴先輩はやんわり呟き、無表情の江ちゃんはなかなか非情なことをはっきり言った。

「二人とも、失礼ですね!!」

怜くんがぷんすか怒鳴る。渚くんはそんな三人の様子を見てけらけら笑っていた。

遥か向こうで泳ぐ遙先輩を見て、またため息をつく。

「私も、泳げたらいいのになぁ」

あんな風にイルカみたいに泳げたら、きっと気持ち良くて最高だろう。私も遙先輩になりたい。

すると隣に座っていた渚くんがスッと立ち上がり、両手を合わせて叫んだ。

「怜ちゃんには無理だから、僕が教えてあげる!」
「へ?」
「ほら行こうよ美代子ちゃん!」

座り込んでいた私の手を引っ張ってを無理やり立たせ、海に連行する。後ろからは怜くんの「なんで僕には無理なんですか!!」という怒りの声が聴こえてくる。
渚くんに手を引かれ走りながら必死に言葉を飛ばす。

「いやいやいや、怖いよ渚くん無理だよ」
「大丈夫!僕がいれば大丈夫だから!」
「むりむりむりむり!」
「無理じゃなーい!泳げないなんてかっこ悪いでしょ」
「その発言はかなりショックなんですが…うわっ!」

二人して倒れ込むように海に飛び込む。痛かった。
もうどうにでもなれ。


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テーマ「人外ファンタジー」
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