放課後、窓ガラスから見える世界は濃い橙色になった。私は自分の席で肘をつき、さっきの休み時間での江ちゃんの言葉を考える。あの台詞が、私のちゃらんぽらんな頭の中でメリーゴーランドのようにぐるぐる回る。

『それ、きっと真琴先輩のことが好きなんですよ。恋愛的な意味で』

まさか、いやそんな馬鹿な。
彼は私の憧れであり愛玩すべき存在なだけだ。遠くから(だいたい近くだけど)見てるだけでハッピーになれる、例えれば可愛い犬猫を見るような感じだと自分では感じていた。
私が、真琴くんの誕生日や下駄箱の場所や家族構成を勝手に調べて記憶して絶対に忘れないのは、彼が可愛いから。ずーっと真琴くんを見てしまうのは、彼がかっこいいから。それが理由であって。
あれ?真琴くんを可愛い、かっこいいって思うのは………あれ?

「田中さん!」

私の苗字を呼ぶのは、一番大好きな柔らかい声だった。びっくりしてドアの方を見ると、部活を終えたらしく髪の毛が水でしっとりしている真琴くんが、肩で息をしてそこにいた。

顔にカッと熱が集まる。

「田中さん、話があるんだ」

つかつかと歩み寄ってくる。逃げたかった。物凄く逃げたかった。真琴くんはまっすぐな瞳で私を見下ろす。

「今度は、逃がさないよ」

真剣な表情、いつもと雰囲気の違う声色に、私は驚いて思わずこくりと頷いてしまった。


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