(どうしてこうなったんだろう)
水泳部の活動中、俺はプールに足を浸してひたすら落ち込んでいた。江ちゃんに大丈夫ですかって何回聞かれたか分からない。
体育館裏に田中さんを呼び出して「友達になってほしい」とお願いしたかったのに。田中さんはもう俺を見るのはやめると言って逃げてしまった。
(違うよ田中さん、俺は、)
俺は、君に見られることが嬉しかったんだよ。
自分でも何でかよく分からないけど田中さんに見られると幸せな気持ちになれるからどんどん見てほしかった。(って言ったら気持ち悪いけど)
そして更にわがままを言うならば、ただ見て見られるだけのクラスメートではなく、まず田中さんと友達になって、そしていつか友達より先の何かになりたかった。友達でも親友ではないものに。
俺も負けないくらい田中さんのこと見ていたのに、彼女本人は俺の視線には気づかなかったのか。
「はぁ…」
田中さんが、俺を見るのをやめる。
それはイコール、俺が一方的に田中さんを見ることになるんだ。
だって俺は、彼女を見ることを辞められない。田中さんのことが、好きになっちゃったから。