「こんなところに呼び出してごめん」

体育館裏で、真琴くんがぺこりと頭を下げる。そしてほっぺを人差し指でかく。可愛い。

「あのね、実は言いたいことがあるんだけど…」

とても言いづらそうに、眉を下げて彼は言う。きっと、いや間違いなく彼はストーカーをやめてくれと言うんだ。それでこんな言いづらそうにしているんだ。
真琴くんは一切悪くない。私の方が色々と申し訳なさすぎる。

「あのね、田中さ「ごめんなさい!!」

食い気味に叫ぶ私に真琴くんの肩はびくりと跳ねる。
もういても立ってもいられずに、その場に勢いよく土下座をした。制服に土が付こうが雑草の匂いが付いてしまおうが、どうでもいい。
真琴くんの顔は見えないが、彼のことだからきっと顔を真っ青にして引いているはずだ。

「私、昨日も迷惑かけたのに、今日もずっとストーカーして」
「え?」
「もう真琴くんのこと見ないように努力します!」

真琴くんじゃない、別のものに関心を抱こう。流行りのゲームとか、面白いと評判の文庫本とか、話題のゆるキャラとか。真琴くんを動物園の動物のように見るのは失礼なことなんだから。

「田中さん…?」

小さな声で真琴くんが私の苗字を呼ぶ。その声が、響きが嬉しくてたまらないけど、でも。

地面についていた頭を上げて、すっくと立ち上がる。

「本当にごめんなさい!」

体育会系のごとく力強く謝る私にきっと真琴くんはドン引きしただろう。彼はポカンと口を開けて驚いていた。
ああああこれは間違いなく引いている。私のあまりの気持ち悪さに、引いている。

また真琴くんから後ずさりをして、背中を向けて走り去る。今度は真琴くんの「待って」の声も聞こえてこなかった。愛想を尽かしたか、ホッとしているのか。
ごめんね真琴くん。もうストーカーは卒業します。神と貴方に誓ってやめます。

全速力で教室に戻る中で、ふと思った。真琴くんは、どんなセリフでストーカーダメゼッタイを言おうと思ったか。
一番考えられる言葉は、やんわりと「もう見るのやめてくれないかな」というところか。
だめだ、やんわりでも憧れの人にそんなこと言われたらショックで気絶してしまう。やっぱり、こちらから謝って誓いを立てておいて良かった。これで良かったんだ。


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -