「風が気持ちいいね、凛くん」

制服のスカートが風に揺らめく。潮の香りがふんわりと漂っていてああ、海だなぁって当たり前のことを思う。

「そうか?ベタベタするだろ」
「まぁね。でもやっぱり海風はいいよ。素晴らしい」
「なんだそりゃ」

隣の凛くんはクールに微笑む。夕日に照らされたその横顔はとても綺麗で、ずっとずっと見ていたくなる。なんでこの人はこんなに美しいのか。両親が物凄く美形なんだろうか。いやそうに違いない。

「美代子」

ふつふつと考え事をしていたら、凛くんに名前を呼ばれた。私は、彼に名前を呼ばれるのがすごく好きだ。耳がくすぐったくなって、幸せになる。

「なんでしょう」
「手」

ぶっきらぼうな一言のあと、凛くんは私に手を差し出した。
これはきっと、繋ごうって意味なんだろう。照れ屋の凛くんが自分からこんなことをするなんて珍しい。私は嬉しくて嬉しくて何回も全力で頷いて手を差し出した。

凛くんの左手と、私の右手を絡めて歩き出す。
さっきより風も潮の香りもずっと気持ち良くて、大好きの感情が湧いてきて、胸はドキドキって弾んでいた。
凛くんと手を繋いでいるから、何もかもが二倍になるよ。


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