「美代子ちゃんの手はもちもちしてるねー」
「そ、そう?」
渚くんは休み時間ずっと、ずーっと、私の右手を触っている。ふにふにふにふに。くすぐったいけど楽しそうなのでやめてとも言えない。
「うん。ずーっと触っていたいもん」
「もうずっと触ってるよね」
「あはは」
椅子に座り、手を触り手を触られる男女二人。周りから見たら異様な光景に違いない。
「渚くんは、手フェチなんだね」
「いや、特にそういう訳でもないよ」
えっ。手が特別好きでもないだと?これだけ楽しそうに幸せそうに触っているなら手フェチに違いないだろう、と不思議に思って渚くんをじいっと見ると、彼は少しだけ顔を赤くして。
「美代子ちゃんの手だから触ってるだけ!」
と叫ぶように言い放った。私は瞬きを何回か繰り返し、相変わらず渚くんを見続ける。
「美代子ちゃん、にぶいよ」
手を離さないまま、ほっぺをぷくーっと膨らます渚くんは可愛いハリセンボンのようだった。にぶい、と言われてしまったけど今この瞬間、私にも分かってしまったかもしれない。
だってこんなにもドキドキしている。