朝日が眩しい。
真琴くんは朝になったら人間になると言っていたけど、どうなんだろう。
昨日お話した時に「人間になったら全裸になるのでは」と尋ねると彼はそのことを忘れてたようで、どうしようとわたわたしていた。
ということで、私はお父さんの洋服(緑のポロシャツにジーパン)と新品のトランクスとバスタオルを持って、コソコソと海に向かっているのだ。
「美代子ちゃん、おはよ…」
海にぷかぷか上半身を浮かばせて、砂浜に腕をだらんと伸ばした真琴くんがいた。良かった、完全に砂浜に上がってなくて。
「おはよう。何か疲れてるね、大丈夫?」
「人間になるのって体力使うみたいで…疲れた」
「そうなんだ…あ、これ洋服とバスタオルだよ」
真琴くんに差し出すと、彼は柔らかく笑い私にお礼を言った。
「岩陰で着替えてくるね」
そう言うとふよふよと立ち泳ぎをして、適当な岩陰に隠れた。
「お待たせ、美代子ちゃん」
何分かした後、真琴くんが岩陰からにゅっと出てきた。そのイケメンな姿に、私は瞬きをする。
緑のポロシャツが彼の雰囲気によく似合っている。薄茶のズボンも、彼の髪色と一緒だからぴったりだ。もう人間そのものである。
人魚の時も美しいけど人間の時も美しい。
「真琴くん、すごいよ。もう完全なる人間」
「ほんと?良かったー」
真琴くんは両手を合わせて喜ぶ。
「見て!砂浜を歩ける!」
感激したように、裸足でシャクシャクと音を立てて歩く真琴くんは、まるで幼い男の子のようでとても可愛らしかった。