「仲良しさんの証として、美代子ちゃんに俺たちの秘密を教えてあげる」
棒っきれで砂浜に魚の絵を描いて遊んでいたら、岩の上で尾ひれをひらひらさせた真琴くんが笑顔を浮かべてそう言う。
「ひみつ?」
「そう。俺たち人魚の秘密」
「それは…言ってはいけないのでは」
「大丈夫。言いたかったら言ってもいいんだから」
相変わらず人魚の世界はルールが緩いみたいだ。でも私も真琴くんの言う秘密とやらに興味がある。
「で、その秘密というのは?」
「うん。あのね、人魚は人間になれるんだよ」
思わず砂浜にひっくり返ってしまった。
「ど、どうやって?!」
「海底にいる人魚の長老おじいちゃんに頼めばいいんだ。でも人間になれるのは夜の12時まで限定。時間を過ぎると、人魚に戻っちゃうんだ」
「(めちゃくちゃだ…)」
なんか聞いたことのあるようないろいろな要素が混じってて、混乱する。
「それでね、美代子ちゃん。またお願いがあるんだけど」
真琴くんは両手を合わせ、眉を下げて申し訳なさそうに微笑む。
「人間になって、美代子ちゃんの家に行ってみたいんだ」
たくさんの驚きと衝撃のせいでまともに言葉が返せなかったけど、とりあえず無言で頷いた。