今日、真琴くんに会いに行ったら岩の上に座っていて、ガラス製の小瓶を持ち首を傾げていた。

「美代子ちゃん、これ何かな」

真琴くんから小瓶を手渡された。中を除くと、更に小さな白い紙が入っているのを見つけた。

「ああ、これきっと手紙だよ」
「手紙?」
「うん。海の向こうの人へ送るの」
「海にゆらゆら流されたら全然知らない人のところへ行くんじゃないかな…?」
「知らない人のところへ送るのがミソだったりもするんだよ」

うんうんと自分で頷く。真琴くんは口をむむむと噤んで何か考え事をしていた。

「…これ、もしかして、俺が拾わない方が良かったんじゃ?」
「どうして?」
「だって、海の向こうの人へ送る手紙だったんでしょ」
「そうかな。人魚さんに拾ってもらえたら私なら嬉しいよ。その人もきっと喜ぶんじゃないかな?」

はい、と真琴くんに小瓶を手渡す。彼は何か考え事をしていたみたいだけど、すぐににっこり笑った。

「じゃあ、この手紙、俺が読んでもいいかなぁ?」
「いいと思うよ」

真琴くんは笑顔で、わくわくしたように小瓶のコルクを外す。そうして中身の手紙を取り出し、海水に濡れないように注意しながら読みだした。しかしそれはほんの一瞬で、彼は顔を上げた。

「これ、手紙っていうか絵だったよ」

ほら、と言って真琴くんは私に紙を見せた。そこにあるのはクレヨンを使って描かれた小さな女の子で髪型は三つ編みでピンクのワンピースを着ていた。矢印の横に「わたし」と少しもじゃもじゃした字で書かれてある。

「きっと小さな女の子が描いた絵なんだねー」

真琴くんはそう言い、相変わらずにこにこしていて嬉しそうだった。その笑顔を見て、私も幸せな気持ちになれた。


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