「真琴くん、いる?」

私は毎日のように真琴くんに会いに行っていた。名前を呼ぶと真琴くんは海からにゅっと顔を出して、こちらまでゆらゆら泳いで寄ってきてくれた。
真琴くんは私の姿を見るとにこにこしてくれて、それがとても嬉しい。

「美代子ちゃん、おはよう」
「おはよう。今日は、何をして遊ぶ?」
「そうそう。さっき海岸でこんなものを見つけたんだけど」

真琴くんが砂浜に置いたのは、水色のビーチボールだった。

「これ、ビーチボールだよ。海で投げ合ったりして遊ぶの」
「いいね。やってみようよ」

真琴くんはビーチボールを持ってきゃっきゃと笑った。なんとも無邪気な青年である。

「これを投げればいいんだよね?えいっ」

彼の右手からぽんと放たれたビーチボールが空に浮かぶ。私は一度キャッチしてから、真琴くんに投げ返す。
それを何回も何回も繰り返す。私、今最高に砂浜での戯れを謳歌してる。

「人間の遊びは楽しいね」

ビーチボールを抱きかかえ、真琴くんはにっこり笑った。

「海底ではどんな遊びをするの?」
「えっと、イカを追いかけて」
「それで?」
「刺身にして食べたり」
「エッ」

海の仲間を食べるのかよ!と思ったけど、私達もお肉を食べたりしてるし人様のこと言えない。

「なかなかワイルドな遊びだね」
「うん。あとは頑丈で綺麗な海藻を使って、編み物したりしてるよ」
「あ、それは…いいね」
「えへへ」

そっちを先に言ってほしかった。


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