昔からある駄菓子屋さんで、私は真琴くんと一緒にかき氷を食べていた。ミーンミンとセミが合唱をする中で、私はイチゴ味を真琴くんはメロン味のかき氷を、しゃりしゃりと音を立て少しかき混ぜながら食べる。
「やっぱり、暑い時にはかき氷だね」
真琴くんがにっこり微笑み、私はイチゴ味のかき氷を頬張りながらうんうんと頷く。
「ねぇ美代子。見て、これ」
べー。と言いながら真琴くんは舌を出した。爽やかとは言い難い緑色でべっとり染められている。
「真琴くん、おばけみたい」
「俺、おばけは苦手だから他のものにして」
「えーじゃあ、妖怪」
「一緒じゃん」
くすくすと真琴くんが笑う。今のべーした彼とか笑う彼とか、もう何もかもがかわいい。天使だ。夏の天使だ。
「美代子も、べーってやってよ」
「うん」
いったん食べるのをやめて、舌を出す。彼は手で口元を抑えて笑い出した。
「あはは。いつもよりもっと赤くなってる」
「妖怪みたいでしょ」
「うん」
「おばけや妖怪は嫌いなんじゃなかったっけ?」
からかいの意地悪で言うと、真琴くんはいつもの柔らかい笑顔を浮かべて
「美代子がおばけや妖怪なら、むしろ、好きだよ」
と照れ臭そうに呟いた。
やっぱり真琴くんは夏の天使だった。