私は松岡兄妹の幼馴染であり、そして自他共に認める彼らのファンであり、ストーカーである。
良く周りから何でそんなに熱心になるのかと聞かれるけど、理由は「双方ともにかわいらしく美しいから」これに尽きる。

今回は江ちゃんをピックアップしようと思う。
最近彼女は我が岩鳶高校の水泳部のマネージャーになったらしく、それと同時に私も毎日水泳部を眺めている。
友人に入部すりゃいいじゃんと言われたが、私はプール自体は好きではない。

今日も金網越しに、江ちゃんを観察した。
いつものポニーテールに、白のジャージ。その手にはバインダーを持ち一生懸命に何かをメモしている。かわいい。

「あの…何をしているのかな…?」
「わっ!橘先輩!」

江ちゃんを見つめているのに集中しすぎて橘先輩が近付いてきているのに気が付かなかった。金網を握りギンギラギンな眼で江ちゃんを見つめる姿を見られたなんて、これじゃあ完全に不審者じゃないか。いや不審者だけど。

「あの、その」
「あっ君、コウちゃんのファンの子だよね」
「そ、そうです…」

橘先輩は部長だからなのか水泳部員の対人関係などの環境のことも把握していて、私が江ちゃんのストーカーだということも前からバレていたのだ。なんとも恥ずかしいことである。

「あと十分で部活終わるから、その時コウちゃんに話しかけてみたらどうかな?」

橘先輩、あなたは聖人か。私を不審者扱いせず、アドバイスまでしてくれるなんて。
私は橘先輩に感謝の礼をし、部活終わりまで張り付くことにした。



「江ちゃん!」

部活終わり、プールから外へ出てきた江ちゃんに近寄る。明らかに「うわ出た」というような顔をしていたけどその表情もまたかわいい。

「もぉ。何しに来たのよストーカー」
「あなたに会いに来ました」
「相変わらず美代子は暇だねぇ」

江ちゃんは呆れたように笑う。変人である私にも隔てなくお話してくれる、彼女のそういうところがとても好き。

「江ちゃんのそばにいたくて」
「何言ってんの!それから江じゃなくて」
「コウちゃん」
「…分かればいいのよ」

ひとつのことに拘ることとか、一生懸命なところとか、揺れる赤いポニーテールとか、もう全部がたまらない。

「江ちゃん、手ぇ繋いで帰ろうよ」
「コウだってば!それと手は繋がない!」
「ええぇー昔はよく繋いでたのに」
「バカ!」

スタスタと歩く彼女の後ろをついていく。ぴょんぴょん揺れるポニーテールが、それはもうたまらなく可愛くてそれを見てるだけでも幸せだった。


「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -